日本の税法上、投資信託で得た「利益」には税金が課されることになっています。
通常、投資信託で利益を得るための方法には2通りの方法があり、「保有している投資信託を売却して利益を得る方法」と「保有している投資信託の分配金を得る方法」があります。
「保有している投資信託を売却して得た利益」は、一般にキャピタルゲイン、「保有している投資信託の分配金で得た利益」は、一般にインカムゲインと呼ばれることもあり、税法上、これらの利益に対して課される税金のルールが国税庁(国)によって定められています。
本記事では、投資信託の購入方法の1つである「積立投資」に焦点をあてて、多くの投資家の皆さんが気になっている税金のルールについて基本的な部分から応用まで詳しく解説していきます。
1. 積立投資で出た利益に税金がかかる
積立投資で保有している投資信託の一部や全部を売却して得た利益(キャピタルゲイン)や分配型の投資信託から得た「普通分配金(インカムゲイン=2で詳しく解説します)」には、20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の税金がかかります。
本項では、これら2つの利益についてそれぞれ解説をしていきます。
売却(解約)により利益が確定した場合に税金がかかる
積立投資は、毎月少額の金額を拠出して投資信託を購入する方法で投資初心者や手元にまとまったお金が無くとも資産形成が始められる有効な投資手法になります。
たとえば、「18年後の子どもの大学費用のため」「30年後の子どもの結婚費用のため」「30年後の老後生活資金のため」などのように、長い時間をかけて少しずつお金を積み立てながら資産運用する積立投資は、お金が必要となった時期や売却益が生じるプラスのタイミングを見て保有している投資信託を売却(解約)することで利益を上げやすい特徴があります。
たとえば、保有している100万円の投資信託を120万円の状態の時にすべて売却したと仮定しますと以下のような売却益が発生すると考えることができます。
(売却価格)-(保有している投資信託の価格)=(売却損益)
120万円-100万円=+20万円(売却益)
この売却益20万円に対して税金がかかることになります。
出典:国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
投資信託は、上記イメージ図の「株式等」に該当するため、売却益20万円に対して20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の税金が徴収されることになります。
20万円×20.315%=40,630円(納めるべき税金)
20万円-40,630円=159,370円(正味の利益)
最終的な正味の利益は、159,370円となります。
なお、ここでのポイントは「投資信託を実際に売却して利益が確定したとき」に税金がかかるという部分です。
つまり、投資信託を売却せずにずっと保有し続けていることで、どれだけ基準価格(投資信託の価値)が上がっていたとしても、利益は確定していないため、税金を納める必要はないことになります。
また、税金は利益が出ていないときは支払う必要がないことから、購入したときよりも基準価格(投資信託の価値)が下がっている状態で売却した場合には、赤字(売却損が発生)となるため税金を納める必要はありません。
赤字の場合は最長で3年間繰り越しができる
国税庁(国)では、投資信託を含む売却によって生じた損失について一定要件を満たすことで最長で3年間の赤字の繰越控除を認めています。
上場株式等を金融商品取引業者等を通じて売却したこと等により生じた損失(以下「上場株式等に係る譲渡損失」といいます)の金額がある場合は、翌年以後3年間にわたり、確定申告により上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得の金額から繰越控除することができます
出典:国税庁 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除より一部引用
ここでいう「上場株式等」とは以下イメージ図の通りです。投資信託は、上場株式等に含まれるため、投資信託の売却損(赤字)は繰越控除の対象となります。
出典:国税庁 金融・証券税制についてより
なお、赤字の繰越控除が認められるということは、以後、3年間で投資信託などを売却した際に生じる売却益や分配金を受けた場合に生じる利益に対して税金が課されることはないといったイメージになります。
出典:国税庁 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除より
上記イメージ図は、110万円の譲渡損(売却損)が3年間の赤字の繰越控除を適用するによって得られる効果を示したものになります。譲渡益(売却益)や配当などと赤字が相殺されることで、本来課される税金がかからない効果が得られていることが分かります。
ただし、3年間の赤字の繰越控除を適用するには、3年間の累積赤字を証明するために連続して確定申告をする必要があります。
本来ならば、そもそも赤字の場合は確定申告をしなくても良いのですが、繰越控除の適用を受けるためには、このような重要な注意点があることを確実に押さえておく必要があります。
2. 分配金には「普通分配金」と「特別分配金」があり、「特別分配金」には税金がかからない
積立投資のなかには「分配型」と呼ばれる商品があり、この「保有している投資信託の分配金で得た利益」に対しても20.315%の税金がかかることになります。
ただし、分配金には「普通分配金」と「特別分配金」があり、「特別分配金」には税金がかからない仕組みとなっています。
普通分配金の仕組み

分配前の基準価額が「12,000円(個別元本+評価益)」であり、2,000円を分配することで分配落ち後の基準価額が「10,000円」となります。
この時、分配金2,000円は、評価益(投資信託の運用で儲けた3,000円の利益)から分配されているものであることから、「投資信託での儲け」にあたると考えられ、「普通分配金」として税金がかかる対象となるわけです。
特別分配金(元本払戻金)の仕組み

分配前の基準価額が「12,000円(個別元本+評価益)」ですが、2,000円を分配することで分配落ち後の基準価額が「10,000円」となります。
前述した例と異なる点は、分配金の内訳がすべて評価益ではなく、「評価益1,000円+個別元本1,000円」になっている点になります。
この時、評価益は「投資信託での儲け」にあたると考えられ、「普通分配金」として税金がかかる対象となる一方で、残る1,000円は個別元本であり、投資信託をするための元手となるお金になります。
したがって、このお金が特別分配金(元本払戻金とも呼ばれます)にあたり、税金がかかることはありません。自分が投資信託をするために支出したお金にそもそも税金がかかるのであれば、誰も投資信託なんて行わないですよね?
上記イメージ図における最終的な分配金は以下のようになります。
普通分配金{1,000-(1,000×20.315%)}+特別分配金1,000=1,796円
なお、分配金がすべて特別分配金の場合には、税金がかからないため、2,000円が分配金となります。特別分配金が支払われることによって税金の支払いはありませんが、基準価格が下落することになるため、投資信託でお金を増やすといった運用効率が悪くなってしまいます。
3. 長期の資産形成を考えているのなら、再投資型の投資信託を選ぼう!
分配金型は、毎月もしくは毎年手元にお金が入ってくるため、投資をしている実感がわきやすいメリットがあります。しかし、長期的な資産形成を考えているのであれば、分配金型ではなく、再投資型を選ぶことをおすすめ致します。
この理由として、分配型の場合、分配金は純資産から支払われるため、積立投資の醍醐味である複利のパワーを最大限活かすことができない理由があげられます。
★参考 2-2.複利のパワーを活かして、資産を増やすことができる
また、普通分配金が支払われる場合、手元に入ってくるお金は税金が差し引かれた後の金額になるほか、特別分配金(元本払戻金)が支払われる場合も含めて、結果として投資信託に投じる元手の資金が減少することになるため、結果として運用効率が悪くなってしまいます。
このような理由から、積立投資による長期的な資産形成を考えるのであれば、複利のパワーを最大限活かすためにも、分配金がない再投資型の投資信託を選ぶべきだと言えます。
★参考 積立投資なら再投資型ファンドを選ぼう!再投資型のメリット・デメリットを紹介
4. 積立投資の税金の支払方法は口座の種類(確定申告の有無)で変わる
積立投資で得た利益に対してかかる税金は、開設した口座の種類によって変わることになります。具体的には、「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」という3つの口座から選ぶ流れとなります。
それぞれの口座の特徴についてまとめたものは次の通りです。
参考 セゾン投信(特定口座でのお取引)より
口座の種類 | 年間取引の損益計算 | 税金の支払い |
---|---|---|
特定口座 (源泉徴収あり) |
販売会社が計算 | 販売会社による源泉徴収のみで完結。 |
特定口座 (源泉徴収なし) |
販売会社が計算 | 投資家自らが確定申告をしますが、申告を簡素にするための書類を販売会社が作成。 |
一般口座 | 投資家自らが計算 | 投資家自らが確定申告をします。 |
自分で確定申告をするのが面倒なら、特定口座(源泉徴収あり)を選ぼう
会社員や公務員など毎月給料の支給を受けている方は、基本的に勤務先が行う年末調整によって1年間の税金の精算を行うことになります。
仮に積立投資を行う際に「特定口座(源泉徴収あり)」を開設した場合、投資信託の売却益や分配金にかかる税金を証券会社等が天引きしてくれることから、その都度、税金の精算がなされることになり、わざわざ確定申告をする必要がありません。
ただし、後述する「重要な注意事項」を必ず押さえておかなければなりませんが、会社員や公務員など通常、確定申告の手続きを取ることが少ない場合や毎年確定申告の手続きをするのが面倒だと感じたりするのであれば、「特定口座(源泉徴収あり)」の口座開設がおすすめです。
利益が20万円以下だと税金を無駄に支払うことに・・・
ここでは、「特定口座(源泉徴収あり)」にかかる「重要な注意事項」について解説していきます。
先に解説しましたように、源泉徴収ありの特定口座は、自分で確定申告をしなくても良いので手間がかからないメリットが得られる反面、時として「払う必要がない税金を支払ってしまう懸念がある」というデメリットが隠されています。
実のところ、特定口座(源泉徴収あり)の場合、利益が20万円以下の場合において、先に源泉徴収された税金の還付が受けられないことになっているため、一概に手間が省けて楽だからといった理由で口座開設をするのは危険です。
あくまでも投資信託の購入金額が大きく、年間の利益が20万円を超えると予測できる場合やまめに投資信託の決済を行なわないのであれば、さほど問題がないと思われますが、積立投資のように少額で投資信託をコツコツ購入し続ける場合で「分配型」の投資信託を選ぶ場合などは注意が必要と言えるでしょう。
源泉徴収なしの特定口座は確定申告が必要!
しかし、利益20万円以下なら確定申告をしなくてもOK!
源泉徴収なしの特定口座の場合、1年間における投資の利益が20万円を超えた際には、基本的に確定申告が必要となりますが、自営業者など毎年確定申告をしなければならない方にとってみますと、源泉徴収ありの特定口座の場合に比べて無駄な税金を差し引きされることもなく、1回の確定申告でまとめて精算することができるためおすすめと言えます。
また、源泉徴収なしの特定口座の場合は、「年間取引報告書」といった1年間の取引における損益内容が記載された書類が銀行や証券会社によって作成され届くことになるため、その書類を用いて簡単に確定申告をすることができるメリットもあります。
こちらは余談となりますが、原則として1年間における投資の利益が20万円以下の場合は、確定申告をする必要もなければ、税金を納める必要もないことから、少額で運用している場合や、売却した金額と分配金が20万円以下の場合になると予測される場合をはじめ、確定申告に慣れていない場合、手間をかけたくないと考えている会社員や公務員などにはおすすめの方法と言えます。
5. 複数の口座を持っている場合は、損益を通算することもできる
仮に複数の口座で積立投資をしており、それぞれで利益と損失が出た場合には、その損益を通算することができます。利益と損失を合算することで、時として税金を支払わずに済むことができるため、しっかりと押さえておきたいポイントと言えます。
以下、簡単な一例を3つ紹介します。
例1:A口座で20万円、B口座で30万円の利益が出た場合
(20万円+30万円)×20.315%=101,575円(納めるべき税金)
例2:A口座で5万円、B口座で5万円の利益が出た場合
特定口座(源泉徴収あり)の場合
(5万円+5万円)×20.315%=20,315円(納めるべき税金)
特定口座(源泉徴収なし)の場合
合計で10万円の利益であるため、確定申告が不要で税金を納める必要がありません
例3:A口座で20万円の赤字、B口座で10万円、C口座で15万円の黒字になった場合
特定口座(源泉徴収あり)の場合
損益通算の結果 -20万円+10万円+15万円=5万円
5万円×20.315%=10,157円(納めるべき税金)
特定口座(源泉徴収なし)の場合
合計で5万円の利益であるため、確定申告が不要で税金を納める必要がありません
本項の重要事項をまとめますと、特定口座(源泉徴収あり)の場合、特定口座(源泉徴収なし)の場合のいずれでも損益通算が可能となります。
ただし、特定口座(源泉徴収あり)の場合、利益が20万円以下の場合において、先に源泉徴収された税金の還付が受けられないため注意が必要です。
そのため、投資信託で得られると予測される利益を踏まえた上で3つの口座のうちどの口座を開設するのかじっくり吟味する必要があります。
【補足】税金が発生することで、会社に副業がバレないか?
そもそも「副業」とは、収入を得るために現在携わっている仕事(本業)以外の仕事をすることを言い、たとえば、アルバイトや日雇い派遣をはじめ、在宅ビジネスや内職などが副業にあたります。
そのため、積立投資を含めた金融商品に自己のお金を投資して資産運用することは、副業にあたらないため、通常、勤務先の就業規則やその他、職務上のルール違反になることはありません。
たとえば、競馬、競艇、競輪といった公営ギャンブルをはじめパチンコやパチスロといったギャンブルは娯楽であり副業にあたらない考え方と基本的には同じです。
ただし、マイナンバー制度によって年末調整の際に個人のマイナンバーの記載をしなければならないことになったことから、逆に確定申告を本来しなければならないのにも関わらず、その提出を怠ったなどの課税ペナルティーは税務署側からなされる可能性が極めて高くなりましたので、その辺には細心の注意が必要と言えるでしょう。
6. 税金を抑えるために「NISA」や「確定拠出年金」を利用するべし!
積立投資を含む投資信託にかかる税金は「20.315%」という大きな税率で課されることがこれまでの解説でご理解できたと思います。
この納めなければならない税金をいかに合法的な方法で負担を少なく抑えられるかは、手元に残るお金に大きな差が生じるところになりますが、具体的な方法として「NISA」や「確定拠出年金」を利用するのがおすすめです。
NISA(ニーサ)とは、少額投資非課税制度といって、1年間の投資活動で得た120万円までの利益について20.315%の税金が5年間かからない(非課税)となる制度のことを言います。
そのため、投資信託を始める際にあらかじめ「NISA口座」を開設し、その口座で投資信託の売却取引や分配金を受け取ることで、本来、納めるべき税金を年間120万円の利益まで納めなくともよいことになります。
確定拠出年金とは、老後の生活資金を自分自身でお金を運用して準備するための制度です。
積立投資のように長期的な時間をかけてお金を少しずつ増やす方法に特に適しており、毎月拠出したお金が全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になります。
ざっくり解説すると節税効果が優れており、積立投資などで得た運用益に税金が課されないため、積立投資を「再投資型」で行う場合は、この方法を強くおすすめしたいものです。
ただし、原則として60歳までお金の引き出しができないため、確定拠出年金は「老後の資産形成」といった目的を持っている場合に利用するべきであり、子どもの学費やその他のためといった目的におかれましては適さない方法であると言えるでしょう。
まとめ~積立投資で出た利益には税金がかかる。税金をいつ・どこで支払えば良いのか?~
本記事では、投資信託の購入方法の1つである「積立投資」に焦点をあてて、税金のルールについて基本的な部分から応用まで詳しく解説させていただきました。改めて本記事の要点をまとめていきます。
- 積立投資を含めた投資信託では「売却益」や「普通分配金」に対して税金がかかる
- 毎年/毎月分配型の場合は、その都度、税金が徴収される
- 赤字の場合は最長で3年間繰り越しが可能であるが確定申告をするなど条件がある
- 開設した口座によって税金の取り扱いが異なる
- 損益通算が可能
- NISAや確定拠出年金を目的別に賢く利用することで運用効果が増加する
積立投資を含む投資信託と税金のルールには、複雑な箇所がたくさんあるため、できる限り、一度、専門家であるFPや投資関係に長けている中立的な立場のアドバイザーから話を聞いてみることをおすすめします。
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