積立投資は、投資信託を毎月少しずつ購入していく投資方法であり、投資信託を毎月積立しているようなところから、積立投信と呼ばれることもあります。
通常、投資信託の価値にあたる基準価額は、毎日上下変動することになりますが、たとえば、リーマンショックや東日本大震災などのように規模の大きな現象が起こってしまうことで、世界全体の経済に大きな影響を与え、時として、保有している投資信託の価額が大きく値下がりしてしまうこともあります。
このような場合に、保有している投資信託の基準価額がより値下がってしまうことによって損失を大きくしないようにするための対策(損切りと言います)が時には必要な場合もあります。
そこで本記事では、この損切りに焦点をあてて、対策方法や積立投資における損切りの活かし方について幅広く解説を進めていきます。
1. 損切りとは、どのようなことをいうのか
はじめに、損切りとは、どのようなことなのかについてSMBC日興証券のホームページを下に解説していきます。
損切りとは、投資家が損失を抱えている状態で保有している投資信託を売却して損失を確定させることをいいます。ロスカット、ストップロスとも呼ばれます。購入した投資信託の価格が下落して、その後の回復が見込めないと判断できるケースでは、損切りが有効と考えられます。
出典 SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集を下に一部改編引用
つまり、現在保有している投資信託を引き続きそのまま保有し続けた場合に、さらに投資信託の基準価額が下がることによって損失金額が膨らんでしまう可能性を防止する対策が「損切り」であることが分かります。
2. 損切りのベストタイミングっていつ?
前項の解説より、損切りについて理解していただくことができたと思いますが、そもそもいつ損切りをすればよいのか?損切りのベストタイミングっていつなのか?といった疑問を多くの皆さまがお持ちだと思います。
先の解説をもう一度、見直して損切りのベストタイミングについて考えていきましょう。
損切りとは、投資家が損失を抱えている状態で保有している投資信託を売却して損失を確定させることをいいます。ロスカット、ストップロスとも呼ばれます。購入した投資信託の価格が下落して、その後の回復が見込めないと判断できるケースでは、損切りが有効と考えられます。
出典 SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集を下に一部改編引用
損切りとは、いわば「最終手段」であり、できることなら損切りをしないことがベストであるものの、「その後の回復が見込めないと判断できるケース」が具体的かつ合理的にあるのであれば、その時が損切りをするベストなタイミングと言えるでしょう。
しかし、一般に損切りのベストなタイミングというのは分からないことが多く、むしろ、損切りをするタイミングというのは、自分がここまでなら損をしても良いという「許容範囲」を決めて、それよりも下回ったら損切りするのがベストタイミングと考えるのが多いパターンです。
3. 積立投資は価格が下がったときこそ儲けるチャンスである場合も!
積立投資には、毎月一定金額の投資信託を購入する方法と毎月一定数量の投資信託を購入するといった2つの方法があります。
この中でも、毎月一定金額の投資信託を購入する方法は、「ドルコスト平均法」とも呼ばれ、投資信託の基準価額が損切りをしたくなる程、下がっている時こそ実は儲けるチャンスであることを知っておく必要があります。
損切りに対する用語として「塩漬け」があります。こちらは、投資信託の基準価額が下落してもそのままにしておくことで、「カブ(蕪)を塩に漬けておく」にかけてそういわれます。また、「ナンピン(難平)買い」という買い方もあり、投資信託の基準価額が下落した水準であえて投資信託を買うことで、平均購入単価を引き下げる手法ですが、投資信託の基準価額が回復できる期待ができるなら塩漬けかナンピン買いをするのが基本となります。
出典 SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集より一部改編引用
積立投資におけるドルコスト平均法とは、上記解説の「ナンピン(難平)買い」のことを指しますが、少しずつ時間をかけて投資信託の基準価額が回復できた場合、結果として、塩漬けかナンピン買いをしたことが大きな運用益を得る結果に繋がることがあります。
イメージとしては「V字回復」のような値動きをすることによって、積立投資で大きく儲けられることに繋がり、具体的な解説につきましては、次項で進めていきます。
具体的に投資信託の価額が下がった場合の資産を計算してみた
投資信託の基準価額が、「V字回復」した一例として、具体的に投資した投資信託が、以下のA~Cの3つの値動きをした場合において、毎月10万円(年間120万円)ずつ投資したと仮定すると、どうなるのか?について見ていきます。

スタート時 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A | 10000 | 20000 | 40000 | 60000 | 80000 | 100000 | 80000 | 75000 | 70000 | 60000 | 50000 |
B | 10000 | 15000 | 20000 | 25000 | 30000 | 35000 | 37000 | 40000 | 42000 | 45000 | 50000 |
C | 10000 | 9000 | 8000 | 6000 | 4000 | 3000 | 7000 | 10000 | 20000 | 35000 | 50000 |
★Aパターンの場合
投資額 | 1200000 | 2400000 | 3600000 | 4800000 | 6000000 | 7200000 | 8400000 | 9600000 | 10800000 | 12000000 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年数 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 |
基準価額 | 20000 | 40000 | 60000 | 80000 | 100000 | 80000 | 75000 | 70000 | 60000 | 50000 |
購入口数 | 60口 | 30口 | 20口 | 15口 | 12口 | 15口 | 16口 | 17口 | 20口 | 24口 |
総口数 | 60口 | 90口 | 110口 | 125口 | 137口 | 152口 | 168口 | 185口 | 205口 | 229口 |
総資産 | 1200000 | 3600000 | 6600000 | 10000000 | 13700000 | 12160000 | 12600000 | 12960000 | 12308571 | 11457143 |
収支 | 0 | 1200000 | 3000000 | 5200000 | 7700000 | 4960000 | 4200000 | 3360000 | 1508571 | -542857 |
★Bパターンの場合
投資額 | 1200000 | 2400000 | 3600000 | 4800000 | 6000000 | 7200000 | 8400000 | 9600000 | 10800000 | 12000000 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年数 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 |
基準価額 | 15000 | 20000 | 25000 | 30000 | 35000 | 37000 | 40000 | 42000 | 45000 | 50000 |
購入口数 | 80口 | 60口 | 48口 | 40口 | 34口 | 32口 | 30口 | 29口 | 27口 | 24口 |
総口数 | 60口 | 120口 | 168口 | 208口 | 242口 | 275口 | 305口 | 333口 | 360口 | 384口 |
総資産 | 900000 | 2400000 | 4200000 | 6240000 | 8480000 | 10164571 | 12188726 | 13998162 | 16198031 | 19197812 |
収支 | -300000 | 0 | 600000 | 1440000 | 2480000 | 2964571 | 3788726 | 4398162 | 5398031 | 7197812 |
★Cパターンの場合
投資額 | 1200000 | 2400000 | 3600000 | 4800000 | 6000000 | 7200000 | 8400000 | 9600000 | 10800000 | 12000000 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年数 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 |
基準価額 | 9000 | 8000 | 6000 | 4000 | 3000 | 7000 | 10000 | 20000 | 35000 | 50000 |
購入口数 | 133口 | 150口 | 200口 | 300口 | 400口 | 171口 | 120口 | 60口 | 34口 | 24口 |
総口数 | 60口 | 210口 | 410口 | 710口 | 1,110口 | 1,281口 | 1,401口 | 1,461口 | 1,496口 | 1,520口 |
総資産 | 540000 | 1680000 | 2460000 | 2840000 | 3330000 | 8970000 | 14014286 | 29228571 | 52350000 | 75985714 |
収支 | -660000 | -720000 | -1140000 | -1960000 | -2670000 | 1770000 | 5614286 | 19628571 | 41550000 | 63985714 |
仮に、基準価額が下がっていくCパターンの場合、最も基準価値が低い3,000円のタイミングで、損切りをしてしまうと、267万円もの損をすることになります。
しかし、10年間投資をした結果、A~Cがどのような資産形成ができるか?というと、A:17,457,143円、B:26,197,812円、C:85,652,381円という結果になります。
パッと見た印象ではAのほうが資産を増やしていそうですが、Cが圧倒的に資産を増やしていることがわかります。
このように、積立投資におけるドルコスト平均法という投資信託の買い方では、購入した投資信託の基準価格が一度下がり、その後上がった方が結果として価値のある投資信託を安く購入できたことに繋がるため、結果として多くの資産を増やすことができるわけです。
4. リーマンショック後の値動きから「損切り」を考えてみる
では、実際にあった大暴落の1つであるリーマンショックが起こったときには、どうだったのか?考えてみましょう。
ここでは一例として、ニッセイ日経225インデックスファンドの値動きで確認してみようと思います。
以下、ニッセイ日経225インデックスファンドは2004年1月28日から2017年6月1日までで次のような値動きをしています。

リーマンショックが起きたのは2008年9月15日(上記グラフの最も低い場所)になりますが、この日を境に、一時は16,969円まで上がった基準価額は6,898円まで下がる結果となりました。
この結果を踏まえまして、まずリーマンショック前から積立投資をはじめて、リーマンショックを機に積立投資を止めた場合、どのような資産形成になったのかを計算してみます。
★例1:2007年9月3日から毎月1日に5万円ずつ積立投資をし、2009年3月2日に積立投資を止めた場合。基準価額の動きは次の通りです。
この場合、投資額は950,000円でしたが、止めた時点での資産は587,559円となってしまい、大損をすることになってしまいました。

次に、リーマンショック以後も積立投資を続けていた場合はどうなるのか?見ていきます。
★例2:2007年9月3日から毎月1日に5万円ずつ積立投資をし、2013年2月1日以降まで積立投資を続けた場合。基準価額の動きは次の通りです。

投資額は3,250,000円で、資産は3,578,831円となりプラスに戻っただけでなく、さらに、これ以降も、ずっとプラスになり続けているのです。
実はニッセイ日経225インデックスファンドは、リーマンショックの前から、ずっとマイナスだったことに加えて、リーマンショック近辺で大きなマイナスになっています。
しかし、それでも継続して積立投資を続けたことで、2013年12月以降から、2017年6月まではずっとプラスになっています。(仮に2017年6月まで投資を続けていた場合は、投資額5,950,000円に対して、資産は10,524,706円となり、プラス4,574,706円となっています)
このようなリーマンショックといった暴落後において、すぐにプラス収益になることは積立投資では難しいですが、長期的に積立投資を続けていれば、暴落時の基準価額が大きく低下している時に大量に購入できた投資信託を活かすことができ、結果として大きく資産を増やすことができる要因になります。(これはニッセイ日経225インデックスファンドだけでなく、他の多くのファンドでも同じようにプラス収益にすることができています)
5. 「塩漬け」や「ナンピン(難平)買い=ドルコスト平均法」で本当に損を回避できるのか?
一例として紹介した「ニッセイ日経225インデックスファンド」の場合は、リーマンショック後に少しずつ時間をかけて基準価額が回復したことによって、結果として「ナンピン(難平)買い=ドルコスト平均法」がプラスの効果をもたらすことになりました。
しかしながら、実際に販売されているすべてのファンド(投資信託)が、リーマンショック後の「ナンピン(難平)買い=ドルコスト平均法」でプラスの効果をもたらすとは限らないこともあらかじめ知っておかなくてはなりません。
つまり、「ニッセイ日経225インデックスファンド」の場合は、「損切り」ではなく「ナンピン(難平)買い=ドルコスト平均法」を選択したことによって、良い資産運用がなされたことになり、保有している投資信託の銘柄やリーマンショックといった大暴落後の選択した資産運用の方法によって運用結果が変わっていたことも併せて押さえておくべきポイントと言えるわけです。
6. まとめ ~積立投資では損切りをするべきではない!価格が下がったときこそチャンス!~
本記事では、「損切り」「塩漬け」「ナンピン(難平)買い=ドルコスト平均法」について解説をさせていただきましたが、積立投資では損切りをするべきではないといった考えは、正しい考えであることは「ほぼ確か」だと管理人は思います。
これは、投資信託の大きな特徴である「分散投資」があげられるためです。
たとえば、株式投資の場合も積立投資の場合も、毎日、株価や基準価額といった価値の上下変動がありますが、株式投資は1種類、投資信託は1種類に複数の金融商品が詰め合わさっているといった大きな違いがあることから、リーマンショックのような大暴落を受けたとしても投資信託の場合は「全く無価値」といった最悪の事態は避けられることになります。
さらに、投資信託には、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)に連動した投資をする「インデックスファンド」といったものがあります。
先に解説した、ニッセイ日経225インデックスファンドを例に解説しますと、「日経225」と呼ばれる、いわゆる日経平均株価に連動して資産運用されるニッセイ日経225インデックスファンドは、リーマンショックのような大暴落を受けて、一時的に大きな基準価額の値下がりを余儀なくされましたが、数年といった年月をかけて元の基準価額以上の結果となりました。
これは、日経平均株価が長い年月をかけて上昇したことによって、ニッセイ日経225インデックスファンドの基準価額も上がったためであり、購入した投資信託がどのような資産運用がされる特徴があるのかをしっかりと把握しておかなければ、紹介した事例のような資産形成を成すことはできません。
いずれにしましても、投資信託の強みを考慮しますと、積立投資では損切りをするのではなく、引き続き継続して投資信託を購入することが大事と言えるでしょう。
我慢して続けることで、最終的に大きな資産形成ができるチャンスが得られるわけでありますから、正に「ピンチがチャンスに変わる」とはこのことを指すのかもしれません。
大きなピンチは、滅多に来るものではありませんが、長期に渡ってしっかりと資産形成をしていくための1つの知識として損切りについてしっかりと押さえておきたいものです。
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