巷では、老後のために〇万円必要といった情報が飛び交っておりますが、そもそもどこまで本当で何が正しい情報なのかといった疑問を抱いている方もたくさんおられると思います。
実際のところ、1人ひとりが思い描いている老後生活というのは、まったく異なるため「○万円必要」と言い切ってしまうのは、老後生活に不安を抱いている方に対して更なる大きな不安を抱かせてしまうことから、あまり適切ではないと考えられます。
しかしながら、本記事で解説していく政府の統計などを加味した計算をすると、たとえば、老後のために3,000万円必要といった表現もさほど乱暴ではないことが理解できる結果となりました。
これからの老後生活資金を無理なく確保するための方法を本記事では詳しく解説してきます。
1. そもそも老後のために3,000万円必要なのか?
厚生労働省が公表している平成27年度における「簡易生命表」によると、2015年(平成27年)の日本人の平均寿命は「男性が80.79歳」、「女性が87.05歳」となっています。
参考 公益財団法人生命保険文化センター 日本人の平均寿命はどれくらい?
なお、平均寿命とは、0歳の人の平均余命のことを言い、たとえば、30歳男性の平均余命は、以下のように計算されることになります。
80.79歳(男性の平均寿命)-30歳(現在の年齢)=50.79歳(平均余命)
この計算例の場合、30歳男性はあと平均で50年間は生きられるであろうといった目安になります。生活習慣や思わぬ事故など様々なリスクによって変化することから、言うまでもなく「目安」とするところがポイントです。
今度は、年金額について考えてみます。
平成29年6月現在、国民年金や厚生年金と呼ばれる「公的年金」の支給は、「原則として65歳から」となっています。
このことから、仮に30歳男性が平均寿命である約80歳まで生きたとすると15年間(80歳-65歳)公的年金の支給が受けられることになり、この15年間の生活費や医療費などを年金や貯蓄などで用意できる体制をあらかじめ整えておく必要があると考えることができます。
では、実際に支給される年金額はいくらになるのでしょう?
結論から申し上げると「年金額は、人によってすべて異なる」が正解です。
たとえば、国民年金の場合、20歳から60歳までの40年間、国民年金保険料を納めなければならない義務が課せられておりますが、仮に40年間すべて国民年金保険料を納めた場合に支給される国民年金額は、平成29年6月現在で「年間779,300円」の定額です。
月に換算すると1ヶ月あたり約64,941円となりますが、これはあくまでも40年間国民年金保険料を納めた人が支給される国民年金であって、たとえば、39年間納めた場合は1年分の国民年金が目減りすることになるほか、毎年国民年金額が改定されることから、将来、さらに支給額が少なくなることも視野に入れておかなくてはなりません。
次に厚生年金について考えます。
厚生年金の支給額は、すべての人が異なり、ざっくり解説しますと今までの給料の金額や賞与(ボーナスの金額)が年金額に大きな影響を与える仕組みになっています。

上記のような複雑かつ面倒な計算で行われるため、参考までに紹介させていただきました。
政府の統計からシミュレーション計算をしてみた結果は次項の通りです。
政府の統計からシミュレーション計算をしてみた結果
上記の塗りつぶしの金額は、年金生活をしている夫婦の1ヶ月あたりの年金収入の平均を表したものになります。
国民年金と厚生年金は「併給(へいきゅう)」といった制度の下、65歳から2つの年金が同時に支給されることになっており、夫および妻の年金を合わせた1ヶ月の年金収入の平均が平成29年度は、221,277円という見方になります。
次に支出額を見ていきます。
年金生活を営む夫婦2人の世帯での毎月の支出は次のような統計が出ていることが確認できます。
年生 | 世帯支出 |
---|---|
65~69歳 | 262,042円 |
70~74歳 | 242,208円 |
75歳以上 | 224,092円 |
参考 総務省統計局~世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)より
年金収入が221,277円、1ヶ月の支出が262,042円だったとすると、1ヶ月あたり40,765円の赤字となり、1年間に換算すると489,180円の赤字となります。このような状態で医療費や介護費用などが必要になったとすると、どのようなことになるのか多くの方が予測できるのではないでしょうか。
仮に夫が生きている65歳から80歳までは、2人以上の世帯で支出を計算し、夫が死亡して妻だけで生活をすることになる80歳から87歳までは単身で支出を計算した場合、必要となるお金をまとめたのが以下の表となります。
年齢 | 年金収入/月 | 平均支出額/月 | 収支の差/月 | 期間 | 差額 |
---|---|---|---|---|---|
65~69歳 | 221,277円 | 262,042円 | -40,765円 | 5年 | -2,445,900円 |
70~74歳 | 221,277円 | 242,208円 | -20,931円 | 5年 | -1,255,860円 |
75~80歳 | 221,277円 | 224,092円 | -2,815円 | 6年 | -202,680円 |
80~87歳 | ※133,487円 | 149,552円 | -16,065円 | 8年 | -1,542,240円 |
合計→ | -5,446,680円 |
※計算の便宜上、妻は専業主婦であったものと仮定し概算計算した遺族厚生年金を含む
仮に政府の統計の通りの平均値で推移している高齢夫婦であれば、性別通りの平均寿命まで生きた場合、約544万円足りないといった試算結果になりました。
しかし、これはあくまでも平均の年金収入および平均支出で計算をしているため、以下のような場合は、さらに老後生活に対する重大な懸念が生じます。
- 夫婦の年金が平均年金収入(221,277円)よりも大きく下回る場合
- 平均寿命よりも長生きした場合(長生きリスク)
- 貯蓄などのストックしたお金がない場合
- 国民年金の免除期間や未納期間が多い場合
どれかにあてはまっているという方は、意外と多いと思います。長年、自営業者を営んでいる場合は、厚生年金がほとんど無いに等しいと考えられることから、シミュレーション結果よりもさらに多くのお金を用意しておく必要があると考えることができます。
現在の生活ベースから老後の生活を予測することが大切
先のシミュレーション結果を見て激的な不安に襲われてしまった皆さまも多いと思います。
しかし、1人ひとりの生活スタイルや思い描いている人生は異なることから、政府の統計に合わせて考えることは大変危険です。
では、余裕を持った老後生活をしていくためには、どれだけの資産が必要なのか大まかに考えてみましょう。
たとえば、現在子育てに奮闘中の方であれば、通常、年金が支給されることになると子どもが自分の手から離れることになりますので、教育費などを含んだ大きな負担はないと思います。
また、住宅購入をされている場合で住宅ローンを年金支給までに完済しているとすれば、住宅ローンの返済といった大きな負担はなく、住宅の維持費にあたる、固定資産税や都市計画税のほか火災保険料や修繕費などが必要になることがあるでしょう。
現在の収入を年金に置き換えて、収入と支出を考えた時、政府の統計平均よりも低いとしても充実した暮らしができる世帯も実は多いはずです。ただし、高齢者特有の介護費用や医療費用に大きな負担がかかることが予測されることから、このお金をどのように用意しておくのかが重要になると思われます。
老後のために概ね3,000万円必要なのか?
これまでの解説を踏まえまして、多くのお金が必要であることはご理解できたと思いますが、老後のために概ね3,000万円必要なのかといった答えとしては「ゆとりある老後生活を送りたいのならば」といった言葉を付した方が良いと考えられます。
仮に老後生活で旅行やレジャーを満喫する場合に必要なお金は1ヶ月に35.4万円といった破格の金額の統計があることから、おそらく多くの皆さまからすると「非現実的」と感じざるを得ないかもしれません。
また、先に紹介した年金平均収入221,277円は表面上の金額であり、実際に手にするお金ではない点も大きな落とし穴です。つまり、もっと目減りしているということです。
このような理由を考慮しますと老後に3,000万円必要な理由も分かるのではないでしょうか?
ただし、語弊の無いように申し上げることとして、まとまった3,000万円を老後までに用意するといったことではなく、トータルで考えた時に3,000万円程度の資産を得られる体制を備えておくことが望ましいといったことですので注意するようにして下さい。
2. 3,000万円の資産形成をする方法
では、老後のために3,000万円の資産を形成するためには、どのようにすれば良いのか?
具体的には「貯める(貯蓄)方法」と「増やす(資産運用)方法」の2つの方法があります。
本項では、それぞれについて簡単に説明をしていきます。
貯める(貯蓄)
貯める方法としては、一例として貯金(積立貯金)があります。貯金でも毎月コツコツお金を積み立てていけば、老後のための3,000万円を貯めることは不可能ではありません。
以下、具体的に銀行の金利で積立貯金をした場合、毎月いくらずつ貯めれば良いかを計算してみました。
銀行での貯金で3,000万円を貯めるために、毎月いくらずつ貯金をすれば良いのか?
→預金の金利 ↓貯金を始める年齢 |
0.01% | 0.10% | 0.30% |
---|---|---|---|
25歳から | 62,375円 | 61,261円 | 58,833円 |
30歳から | 71,304円 | 70,189円 | 67,753円 |
35歳から | 83,209円 | 82,093円 | 79,650円 |
40歳から | 99,875円 | 98,759円 | 96,309円 |
45歳から | 124,876円 | 123,759円 | 121,303円 |
50歳から | 166,542円 | 165,427円 | 162,966円 |
55歳から | 249,876円 | 248,762円 | 246,300円 |
金利0.01%でも、25歳から65歳までの40年間毎月62,375円ずつ貯金をし続ければ、3,000万円を貯めることはできる結果となりました。
ただし、ライフプランを考えた時に多くの方が毎月62,375円を積み立てて貯金することは「非現実的」です。これは、毎日の生活にかかるお金のほか、住宅ローンの返済や教育資金などを考慮すると明らかです。
決してできなくはありませんが、望ましい方法とは言えないと考えることができます。
個人年金保険
個人年金保険は、公的年金の不足を補うための私的年金であり、生命保険会社に保険料を支払い、満期まで掛け続けることによって原則として満期保険金がプラスになって戻ってくる生命保険です。
一般に個人年金保険は、死亡給付金があることから、万が一、保険料を支払っている途中で死亡した場合、遺族が今まで掛けていた保険料相当額を受け取れる仕組みとなっているため、損をしない仕組みとなっています。
一方、個人年金保険を満期前に中途解約すると、元本割れしてしまい結果として損をしてしまうため、無理のない範囲内で満期まで掛け続けることが大きなポイントになります。
個人年金保険は、契約の仕方によって税法上認められている「生命保険料控除(個人年金用)」が適用されるため、この制度を賢く利用できることが更なるポイントと言えます。
<メリット>
– 銀行よりも利回りが良い
– 計算式にあてはめた一定額を所得から控除できるため、節税にもなる
<デメリット>
– 途中(短期間)で解約すると元本割れをする
– 期間中に保険会社が倒産すると元本割れをする(ゼロにはならない)
– インフレに弱い。インフレになると保険金の価値も下がってしまう
増やす(資産運用)
老後の3,000万円を確保するためには、資産運用をしてお金を増やすという方法もあります。具体的に、安定して資産を増やすためには、長期の資産運用である積立投資がオススメです。
積立投資(投資信託)
積立投資は投資家から集めたお金をプロの専門家が運用してくれる投資方法になります。積立投資で運用する「投資信託」は、国内外の株式や債券などを少しずつ詰め合わせた「幕の内弁当」のようなものであり、様々な投資信託を購入することによって、分散投資をすることができ、低リスクで資産運用をすることができる特徴があります。
そのため、一般に積立投資は資産を増やしたい投資初心者にとって、はじめやすい投資方法とされます。
<メリット>
– 少額(500円)から投資をすることができる
– プロが運用してくれるため、投資初心者でも気軽に始められる
– プロが運用してくれるので、時間のない社会人でも投資を続けやすい
– 投資信託(ファンド)を分散して持つことで、安定して資産形成をすることができる
– インフレなどに対抗できる
– 複利のパワーを活かして、資産を増やしやすい
<デメリット>
– ファンドの価格変動によっては、元本割れをすることもある
– 運用コスト(手数料)がかかる
– 積立投資よりも一括投資のほうが資産を増やせることもある
3. 積立投資で3,000万円を確保する方法を計算してみた
積立投資で3,000万円以上の資産形成をするためには、毎月どれくらいのお金を積立投資に回せば良いのかを計算した結果が以下の表になります。
→投資の利回り ↓投資を始める年齢 |
1% | 3% | 5% |
---|---|---|---|
25歳から | 50,857円 | 32,395円 | 19,659円 |
30歳から | 59,686円 | 40,455円 | 26,406円 |
35歳から | 71,492円 | 51,481円 | 36,046円 |
40歳から | 88,062円 | 67,263円 | 50,377円 |
45歳から | 112,968円 | 91,379円 | 72,987円 |
50歳から | 154,548円 | 132,174円 | 112,238円 |
55歳から | 237,812円 | 214,682円 | 193,197円 |
通常、利回りが3%から5%は、安定した資産運用ができるパーセンテージであることから、俗にいうところの「ハイリスク・ハイリターン」にはあたりません。
そのため、利回り5%で若い内から積立投資を始めることで、銀行に預けるよりも、はるかに少ない金額で3000万円の資産形成をすることができるわけです。
参考.定期預金と積立投資の両方で3,000万円の資産形成をする
積立投資は元本割れをする危険性もあることから、すべての資産を積立投資に回すことはできない方も当然におられます。このような時は、定期預金と積立投資の両方を利用して3,000万円の資産形成をするのも良いでしょう。
ここでは仮に1,000万円を定期預金(利子なしとします)と、2,000万円を積立投資で資産形成する場合として以下、参考までに一覧を掲載します。
積立投資で2,000万円の資産形成をする場合、毎月いくら積立てる必要があるか?
→投資の利回り ↓投資を始める年齢 |
1% | 1.5% | 2% | 2.5% | 3% |
---|---|---|---|---|---|
25歳から | 33,905円 | 30,434円 | 27,232円 | 24,289円 | 21,597円 |
30歳から | 39,790円 | 36,237円 | 32,919円 | 29,832円 | 26,970円 |
35歳から | 47,661円 | 44,024円 | 40,591円 | 37,358円 | 34,321円 |
40歳から | 58,708円 | 54,987円 | 51,438円 | 48,057円 | 44,842円 |
45歳から | 75,312円 | 71,509円 | 67,843円 | 64,314円 | 60,920円 |
50歳から | 103,032円 | 99,149円 | 95,368円 | 91,691円 | 88,116円 |
55歳から | 158,542円 | 154,583円 | 150,694円 | 146,873円 | 143,121円 |
定期預金で1,000万円を貯める場合、毎月いくら貯金をしていく必要があるか?
月の貯金額 | 年間貯金額 | 最終貯金額 | |
---|---|---|---|
25歳から | 21,000円 | 252,000円 | 10,080,000円 |
30歳から | 24,000円 | 288,000円 | 10,080,000円 |
35歳から | 28,000円 | 336,000円 | 10,080,000円 |
40歳から | 34,000円 | 408,000円 | 10,200,000円 |
45歳から | 42,000円 | 504,000円 | 10,080,000円 |
50歳から | 56,000円 | 672,000円 | 10,080,000円 |
55歳から | 84,000円 | 1,008,000円 | 10,080,000円 |
仮に25歳から40年間、利回りが1.0%の積立投資と、定期預金をする場合は、合計で毎月54,905円を積立投資と貯金に回せば3,000万円を確保することができるといった見方になります。
長期の時間といった武器を有効に活用するためには、やはり早い内から積立投資などで資産形成をする準備が必要であることが改めて分かります。
まとめ
本記事では、老後生活資金3,000万円を無理なく確保するための方法として幅広く解説をさせていただきました。
老後のための資金(生活費など)を確保するためには、早い内から積立投資をするのが適していると感じられた方も多いと思います。また、実際に積立投資は、長期間といった時間をかけることから、リスクも少なく安定してお金を増やせる可能性が高い投資方法になります。
特に小さな子どもを育てている世帯の皆さまには、当然に子どもにかかる教育費や住宅購入などについて考えなければならない一方で、自分たちの老後生活資金も忘れてはならないと思います。
一般に人生の三大資金とは、「教育資金」「住宅資金」「老後資金」です。
これらすべての資金を疎かにすることがないように賢い資産運用が大切であり、それを解決するための1つの方法として積立投資は望ましい方法であると言えます。
ちなみに、積立投資の始め方は以下のページで詳しく解説しています。
これから老後の生活費など、将来のために資産形成を始めようと考えている方は、ぜひ読んでくださいね!
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