NISA(少額投資非課税制度)は、1年間で120万円以下の投資金額で得た利益に対して最大で5年間、税金がかからない制度のことをいいます。
平成29年12月現在の所得税法上では、投資で得た利益等には「20.315%」という大きな税率が課されて税金が徴収されることになるため、NISAを活用した効果はとても大きなものがあります。
一方で、NISAを活用するということは、投資(資産運用)をすることにあたりますので、時として「元本割れ=損をする」場合もあるほか、NISA特有の大きな注意点もあります。
このようなことから、本記事では、NISAを活用してできる限り赤字にならないための運用方法や元本割れを防止するために心掛けておきたい基本的な部分などについて幅広く解説を進めていきます。
1. NISAは投資!預金ではないため元本割れをすることがある
冒頭でも軽く触れましたように、NISAは、投資(資産運用)にあたるほか、投資の対象とされている金融商品があらかじめ決められている特徴があります。
NISAで投資対象となる金融商品 | NISAで投資対象とならない金融商品 |
---|---|
株式投資信託 | 非上場株式 |
国内株式 | 預貯金 |
外国株式 | 債券 |
国内ETF | 公社債投資信託 |
海外ETF | MMFおよびMRF |
ETN(上場投資証券) | eワラント |
国内REIT(J-REIT) | 上場株価指数先物 |
海外REIT | FX(外国為替証拠金取引) |
新株予約権付社債 | 金・プラチナ |
ワラント債 |
出典 NISAで取り扱える金融商品を紹介!NISAをやるなら投資信託を選ぼう!より
一般に元本保証とされる「預貯金」をはじめ、投資の安全性が非常に高い、債券、公社債投資信託などへは、NISAで投資(資産運用)することはできないとされていることが表から確認できます。
NISAで投資対象となる金融商品とは、すべて「元本割れ」を生じさせる可能性のある金融商品となりますので、この部分は、NISAを活用する以前に、最低限押さえておかなければならないポイントと言えるでしょう。
2. NISAでは、どうなると元本割れをするのか?
NISAで投資をすることができる金融商品について確認ができたところで、どのような場合に元本割れが起こってしまうのか、NISAを活用して投資信託で投資をしたものと仮定して、以下、検証をしてみたいと思います。
なお、投資信託の購入方法として、一括でまとめて購入する「一括投資」と毎月一定金額ずつ購入する「積立投資=ドルコスト平均法」の2通りで検証していきます。
一括投資で購入し、基準価額が右肩下がりの場合
投資信託で利益を上げるためには、基準価額と呼ばれる投資信託の価値が上がる必要があり、逆に、基準価額が購入したときよりも下回った場合は赤字になるという法則性があります。
この法則性を証明するために、以下、参考例として、1月にNISAの最大投資金額にあたる120万円分の投資信託を一括で購入(一括投資)し、12月までの1年間で、投資信託の基準価額が下がり続けた場合をシミュレーションしてみます。

月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
基準価額 | 10,000 | 9,500 | 9,000 | 8,500 | 8,000 | 7,500 | - |
購入口数 | 1,200,000口 | - | - | - | - | - | 1,200,000口 |
月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 総合計 |
基準価額 | 7,000 | 6,500 | 6,000 | 5,500 | 5,000 | 4,500 | - |
購入口数 | - | - | - | - | - | - | 1,200,000口 |
※購入口数は、1口あたり1円とし、端数は切り上げ処理するものとします
- 保有している投資信託の12月における現在価値(時価)= 540,000円
- 12月までの投資元金 1,200,000円
- トータルリターン(運用成績)=▲660,000円
参考 計算方法
- (4,500÷10000)×1,200,000口=540,000円
- 1,200,000円(1月に一括投資)
- 540,000円-1,200,000円=▲660,000円
参考例では、12月時点での計算としておりますが、基本的に投資信託の基準価額が値下がりしている時点で投資信託を売却すると、購入した時よりも損をする、いわゆる「元本割れ」が発生します。
つまり、2月から12月のどの時点で投資信託を売却しても元本割れが生じることを意味します。
一括投資で購入し、基準価額が一度上昇した後、下降した場合
今度のシミュレーションは、1月にNISAの最大投資金額にあたる120万円分の投資信託を一括で購入(一括投資)し、6月までの半年間は、基準価額が上昇したものの、7月から12月までの半年間で、投資信託の基準価額が下がり続けた場合をシミュレーションしてみます。

月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
基準価額 | 10,000 | 11,000 | 12,000 | 13,000 | 14,000 | 15,000 | - |
購入口数 | 1,200,000口 | - | - | - | - | - | 1,200,000口 |
現在価値 | 1,200,000 | 1,320,000 | 1,440,000 | 1,560,000 | 1,680,000 | 1,800,000 | - |
月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 総合計 |
基準価額 | 14,000 | 13,000 | 12,000 | 11,000 | 10,000 | 9,000 | - |
購入口数 | - | - | - | - | - | - | 1,200,000口 |
現在価値 | 1,680,000 | 1,560,000 | 1,440,000 | 1,320,000 | 1,200,000 | 1,080,000 | - |
※購入口数は、1口あたり1円とし、端数は切り上げ処理するものとします
先に解説した法則性をこちらのシミュレーション結果でも証明できておりますが、基準価額が途中まで値上がりをした場合でも、最終的に購入した基準価額(10000円)を割ると赤字(元本割れ)をしていることが確認できます。
- 保有している投資信託の12月における現在価値(時価)= 1,080,000円
- 12月までの投資元金 1,200,000円
- トータルリターン(運用成績)=▲120,000円
参考 計算方法
- (9,000÷10000)×1,200,000口=1,080,000円
- 1,200,000円(1月に一括投資)
- 1,080,000円-1,200,000円=▲120,000円
できる限り、元本割れを起こさないようにするためには、保有している投資信託の基準価額が、大きく下がっていない時に売却する必要があるほか、運用成績にあたるトータルリターンが、現在どの程度なのか、定期的に確認しておくことが大切なのです。
3. 毎月定額購入方法(ドルコスト平均法)の場合
先の解説に引き続きまして、投資信託を毎月一定金額ずつ購入していく積立投資(ドルコスト平均法)の場合は、どのようになるのかを検証していきます。
基準価額が右肩下がりの場合

月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
基準価額 | 10,000 | 9,500 | 9,000 | 8,500 | 8,000 | 7,500 | - |
購入口数 | 100,000口 | 105,264口 | 111,112口 | 117,647口 | 125,000口 | 133,334口 | 692,357口 |
月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 総合計 |
基準価額 | 7,000 | 6,500 | 6,000 | 5,500 | 5,000 | 4,500 | - |
購入口数 | 142,858口 | 153,847口 | 166,667口 | 181,819口 | 200,000口 | 222,223口 | 1,759,771口 |
※購入口数は、毎月10万円、1口あたり1円とし、端数は切り上げ処理とします
毎月定額購入方法(ドルコスト平均法)で投資信託を購入する場合、購入する月の基準価額が下がっていると、それだけ購入できる口数は増えることになります。
しかし、基準価額が右肩下がりのままですと、どれだけ毎月定額購入方法(ドルコスト平均法)で保有口数が多く購入できたとしても、元本割れを起こしてしまうことになります。
- 保有している投資信託の12月における現在価値(時価)= 791,896円
- 12月までの投資元金 1,200,000円
- トータルリターン(運用成績)=▲408,104円
参考 計算方法
- (4,500÷10000)×1,759,771口=791,896円(端数切捨て)
- 100,000円×12ヶ月=1,200,000円
- 791,896円-1,200,000円=▲408,104円
基準価額が一度上昇し、その後、下降した場合

月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
基準価額 | 10,000 | 11,000 | 12,000 | 13,000 | 14,000 | 15,000 | - |
購入口数 | 100,000口 | 90,909口 | 83,334口 | 76,923口 | 71,429口 | 66,667口 | 489,262口 |
現在価値 | 100,000円 | 209,999円 | 329,091円 | 456,515円 | 591,633円 | 733,893円 | - |
月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 総合計 |
基準価額 | 14,000 | 13,000 | 12,000 | 11,500 | 11,000 | 10,500 | - |
口数 | 71,429口 | 76,923口 | 83,334口 | 86,957口 | 90,909口 | 95,238口 | 994,052口 |
現在価値 | 784,967円 | 828,898円 | 865,137円 | 929,090円 | 988,695円 | 1,043,754円 | - |
※購入口数は、毎月10万円、1口あたり1円とし、端数は切り上げ処理とします
- 保有している投資信託の12月における現在価値(時価)= 1,043,754円
- 12月までの投資元金 1,200,000円
- トータルリターン(運用成績)=▲156,246円
参考 計算方法
- (10,500÷10000)×994,052口=1,043,754円(端数切捨て)
- 100,000円×12ヶ月=1,200,000円
- 1,043,754円-1,200,000円=▲156,246円
毎月定額購入方法(ドルコスト平均法)では、基準価額が上がると購入できる口数は減ってしまうことが表から確認することができ、最終的に基準価額が、値下がりをすると、元本割れしてしまうことが確認できます。
ただし、すぐに元本割れが発生するのではなく、上記表では、7月から基準価額が値下がりし始めており、9月で元本割れしていることが確認できます。
参考 8月のトータルリターン(運用成績)
現在価値 828,898円(表より)
投資金額 800,000円
トータルリターン 28,898円
参考 9月のトータルリターン(運用成績)
現在価値 865,137円(表より)
投資金額 900,000円
トータルリターン ▲34,863(元本割れ)
これらのシミュレーション結果より、基準価額が下がり始めてくることで元本割れが発生するリスクが高まることがわかります。
どこまで基準価額が下がることによって元本割れが生じるのか、また、どこまで基準価額が下がった時に保有している投資信託を手放して利益確定をさせるのかといった自分なりのルールを決めることがとても大切になるのです。
4. NISAで元本割れをしたときの2つのデメリット
投資(資産運用)で元本割れをするのは、かなりダメージが大きいことは言うまでもありませんが、NISAを活用して投資を行う場合は、以下で解説する2つのデメリットについてあらかじめ押さえておくことが大切です。
NISAでは損益通算ができない
損益通算とは、投資で得たプラスの利益と投資で発生したマイナスの損失をプラスマイナスして相殺することをいいます。
投資を始める際、証券口座というものを開設しておく必要があるのですが、証券口座には、「一般口座」「特定口座」「NISA口座」という3つの種類の口座があります。
NISAを活用するということは、NISA口座を活用することを意味しますが、仮に、一般口座や特定口座も利用して投資を行っていた場合、これらの利益や損失とNISA口座で得た利益や損失をプラスマイナスする損益通算はできない決まりになっています。
NISA口座のみで投資をしている方にとっては、影響がないデメリットになりますが、複数の証券口座を活用して投資を行っている方や行う予定がある方は、注意が必要です。
赤字で終わり、その後、値上がりをすると税金がかかってしまう
NISAの非課税期間は最大で5年間ですが、この期間が終了した後、投資を始めた当初よりも基準価額が下がっていると税金を徴収されることはありません。
しかし、非課税期間が終了後は、値下がりしている基準価額が取得価額とみなされる決まりになっていることから、仮に、その金融商品が値上がりすると、当初購入した基準価額以下でも、値上がった分だけ税金がかかってしまうデメリットがあります。
出典 金融庁 NISAのポイントより引用
こちらのデメリットの解説を含めた、NISAのメリットおよびデメリットにつきましては、同サイト内で公開している「NISAのメリット・デメリットをわかりやすく解説。NISAを始める前に知っておこう」で紹介しておりますので、そちらの記事を参考にされることをおすすめ致します。
5. NISAのデメリットを払拭するためにするべきこととは
NISAは、投資で利益を上げた時に大きな効果を発揮する一方、元本割れが生じた場合のデメリットは大きいことから、いかにNISAを活用してプラスの利益を得られるかが大きな課題となります。
本記事の解説にあたって、投資信託の基準価額の値動きを例に元本割れを解説しましたが、元本割れを起こさないためのベースとなるのは、「NISAを始める金融機関選び」と「NISAを活用するための銘柄(商品)」選び」に尽きると管理人は考えます。
NISAで投資をする方法が、一括投資であったとしてもドルコスト平均法であったとしても、投資信託の基準価額が上昇することによって利益が得られる仕組みになっていることに変わりないことをまずはしっかりと理解しておくことが大切です。
つまり、良い金融機関を選んで、良い投資信託を購入することができるということは、基準価額の毎日の上下変動を繰り返しながらも右肩上がりに値動きをしていくことに繋がり、結果としてプラスの利益を得られることになるのです。
6. まとめ ~NISAでも元本割れをすることはある。赤字にならないための運用方法は?~
NISAは投資であることから元本割れをするリスクは必ず存在します。
しかしながら、シミュレーション結果を見ておわかりのように、投資信託の基準価額が下がった時に元本割れをするリスクが発生し、投資信託を売却するタイミングを間違えなければ元本割れを防げることもご理解できたと思います。
NISAは、1年間で120万円以下の投資で得た利益に対して5年間、税金がかからない仕組みであり、回数制限というものを設けていません。
つまり、利益が出るとわかった時に保有している投資信託を売却し、まめに利益を確定させるといった方法も決して悪い方法であるとは言えません。
ただし、投資信託は株式と異なり、一時的に大きく値上がりする期待はできませんので、このあたりにつきましては、ご自身がNISAを活用してどのような投資をしたいのか、どのように利益を上げたいのかといった個々の考え方について変わってくることになるでしょう。
仮に、NISAで投資信託に投資をするのであれば、どの時点で元本割れが生じるのか、どこまで基準価額が下がった時に保有している投資信託を手放して利益確定をさせるのか、良い投資信託の銘柄(商品)は何なのか、といった事項を重点的に確認しておくことで、シミュレーション例で紹介したような元本割れは避けて通れることは確かだと管理人は考えます。
楽天証券で積立投資をするなら、楽天カードを使うと超お得!
楽天証券で投資額を楽天カードで支払うと、投資額の1%が楽天スーパーポイントとして貯まります!しかも、今なら楽天カードの新規入会で5,000ポイント(5,000円相当)をプレゼント!ポイントで投資信託も購入できるので、積立投資を始めたい方には超お得ですよ!
楽天カードのお申し込みはコチラから>>>