年金不安が世代を問わず多くの方に抱かれている中で、将来の老後生活資金にあたる公的年金は、今後ますます支給される金額が低くなると予測されています。
働き方も大きく変化を遂げており、従来の定年が60歳から65歳になっているところも多くなっているものの、今後は、70歳近くまで働くような労働環境が定着してしまう懸念も否めなくなってきました。
これは、現在、原則として65歳から支給開始となる公的年金が、将来70歳などに支給開始年齢が引き上げられてしまうかもしれない懸念があるわけであり、私たち現役世代は、このようなリスクを回避するために、今から老後生活資金を公的年金だけに頼らないような対策をしていく必要があると考えられます。
そこで本記事では、公的年金の仕組みについて解説を進め、併せて、公的年金だけに頼らないような対策方法について紹介していきます。
1. 公的年金が支給される仕組みを知ろう
公的年金とは、老後の生活資金としての役割があるのをはじめ、病気やけがによって重い障害を負ってしまった場合、一家の生計維持者が亡くなったことによって収入が無くなった場合や大きく減少した場合などに備えて国が加入を義務付けている年金制度のことをいいます。
公的年金には、大きく「国民年金」と「厚生年金保険」があり、国民年金は、昭和61年4月に年金法の大きな法改正によって、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入を義務付けられており、平成30年現在においてもこの義務は変わっていません。
国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満の方で自営業者やフリーランスをはじめ、会社員や公務員に扶養されている妻または夫、無職の方、学生などが加入の対象です。
一方、厚生年金保険は、会社員や公務員といった職業の方などが加入しており、企業や国に使用される人(被用者)が加入の対象になっていることから、別に「被用者年金」と呼ばれます。
すでに解説をさせていただきましたように、現在、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が、国民年金の加入を義務付けられていることから、会社員や公務員といった職業の方は、被用者年金にあたる厚生年金保険と国民年金の両方に加入していることになります。
公的年金の支給金額について
公的年金には、大きく「国民年金」と「厚生年金保険」があることを解説しましたが、実際に支給される年金額は、「国民年金」と「厚生年金保険」でそれぞれ異なります。
たとえば、国民年金の場合、20歳から60歳までの40年間に実際に納めた国民年金保険料が将来の年金額として反映される仕組みとなっており、平成30年3月現在において、40年間すべて国民年金保険料を納めた場合、1年間で「779,300円」となっていることから、月額に換算すると、約64,941円となります。
なお、国民年金の支給金額は、毎年4月より金額が変わることになりますが、実際に支給される金額は、毎年上下変動する場合や据え置かれる場合など様々です。
一方、厚生年金保険の場合、生年月日や性別をはじめ、これまで給与や賞与から天引きされた厚生年金保険料が深く関係しているため、国民年金のような「定額支給」ではなく、個々によってすべて支給金額が異なります。
なお、現在、20代から40代といった現役世代の方であれば、50代や60代の方に比べて厚生年金保険から支給される年金額に厚みがなく、以下のような「報酬比例部分」と呼ばれる金額が支給金額のベースとなります。
報酬比例部分
報酬比例部分の年金額は、1の式によって算出した額となります。
なお、1の式によって算出した額が2の式によって算出した額を下回る場合には、2の式によって算出した額が報酬比例部分の年金額になります。
1 報酬比例部分の年金額(本来水準)
出典 日本年金機構 厚生年金保険(老齢厚生年金)より引用
報酬比例部分の年金額計算式
2 報酬比例部分の年金額(従前額保障)
(従前額保障とは、平成6年の水準で標準報酬を再評価し、年金額を計算したものです
出典 日本年金機構 厚生年金保険(老齢厚生年金)より引用
報酬比例部分の年金額
平均標準報酬月額とは、平成15年3月までの被保険者期間の各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月までの被保険者期間の月数で除して得た額です。
平均標準報酬額とは、平成15年4月以後の被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以後の被保険者期間の月数で除して得た額です。
これらの計算にあたり、過去の標準報酬月額と標準賞与額には、最近の賃金水準や物価水準で再評価するために「再評価率」を乗じます。
出典 日本年金機構 厚生年金保険(老齢厚生年金)より引用
先に紹介した国民年金に比べますと、非常に複雑で何が何だかよくわからないといった方がほとんどだと思いますので、ご自身が将来支給される予定の年金を知るためには、日本年金機構が無料で行っている「ねんきんネット」を活用するのが確実です。
ねんきんネットを活用することによって、これまでの年金加入履歴をはじめ、将来支給される予定の年金額を現時点で知ることもできるため、将来の老後資金対策を行う上でためになるほか、何よりも最も合理的に対策をすることができるためおすすめです。
2. 退職金だけでは、将来の老後生活資金は充分ではない懸念
退職金には、将来の老後資金としての役割もありますが、現在の日本の状況や勤務先の状況から多くの退職金を望めない状況下にあることは確かです。
また、人生100年時代とも呼ばれることもあり、一生涯を考えた時に、これまで解説した公的年金だけでは、将来の老後生活資金は充分ではない懸念もあります。
参考:http://www.resonabank.co.jp/nenkin/info/note/pdf/201703.pdf
退職金は、老後生活資金の一部として考えることは結構ではありますが、これからのことを考慮しますと、やはり、自助努力によった自分年金作りが求められる時代になっていることは確かです。
3. 公的年金や退職金だけに頼らない老後資金対策方法
前項の解説の続きとなりますが、国は、自分たちの自助努力によって老後のための資金を作らせようとしていることは明らかであり、具体的には、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」、「少額投資非課税制度(NISAおよびつみたてNISA)」などの制度を用意して、自分のたちの手で資産を作るように推奨しています。
つまり、公的年金や退職金だけでは、老後生活に必要な資産を確保するのは難しい、もしくは、日本全体を揺るがすような大きな問題となるため、結果として国は、自助努力で投資をしながら資産を増やさなければ、老後の生活資金をはじめ豊かな生活をすることはできないと遠回しに伝えているメッセージと捉えることもできるでしょう。
とてもおかしな話ではありますが、少なくとも私たちは、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」、「少額投資非課税制度(NISAおよびつみたてNISA)」などの制度を活用した公的年金や退職金だけに頼らない老後資金対策を取っておく必要のあることは確かです。
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは、老後の生活資金を準備するための制度であり、毎月決めた掛金を拠出し、拠出した掛金をご自身が自らの責任で資産運用するといった特徴があります。
- iDeCoで積立した年金資産が個人別に管理されるため個人の持分が明確である
- iDeCoで積立する年金資産の資産運用をご自身で選ぶことができる
- 転職した場合などに年金資産を転職先の年金制度に移して資産運用を続けることができる
- 税制上の優遇が大きく受けられる
老後の生活資金を準備する上でiDeCoは、最も効果的な制度であると言われ、後述するつみたてNISAといずれかの方法を活用することで、誰でも無理なく老後資金を準備することができます。
参考 個人型確定拠出年金の仕組み・メリット・デメリットについて解説
つみたてNISAとは
つみたてNISAは、平成30年1月より始まった少額投資非課税制度のことをいい、iDeCoのように、積立する金融商品(金融庁が指定している投資信託もしくはETFに限られる)の資産運用をご自身で選ぶことができる特徴があります。
つみたてNISAは、1月1日から12月31日までの1年間で年間40万円以下となるような投資金額にしなければならない特徴がある一方、最大で20年間資産運用した利益に対して税金が課されない仕組みになっているため、20年間、積立投資をすることによって、時間をかけながらじっくり老後のお金を準備することが可能になっています。
つみたてNISAは、iDeCoに比べると節税効果について劣るデメリットがあるものの、必要な時にいつでも現金化することができるため、10年後、15年後など、中途でお金が入り用になった場合に、まとまったお金を引き出すことができるメリットがあります。(iDeCoは60歳までお金の引き出しが不可)
参考 つみたてNISAで老後資金を賢く作る方法と考え方を解説
余裕がある方は「両制度を併用」する考え方を持つ
iDeCoやつみたてNISAは、どちらも将来のお金を準備するために優れた制度であることは確かであり、いずれの制度も併用して活用できればベストです。
ただし、あくまでも無理のない範囲内で資産運用をすることに加え、毎月拠出できる金額は個々によって決まっていることを踏まえますと、何のためにこれらの制度を活用するのかといった投資目的を明確にした上で、どちらの制度を活用するのか検討する必要があります。
4. 日本の年金制度は、少子高齢化の影響を受けやすい
現在の日本の公的年金は、基本的に「賦課方式」と呼ばれる方法で運営されており、20歳から60歳までの現役世代が納めた国民年金保険料や現役世代が納めた厚生年金保険料は、そのときの年金受給者への支払いにあてられています。
この理由は、公的年金の実質的な価値を維持するためです。
年金の実質的な価値=決まった額ではなく、物価、所得水準に応じた「経済的価値」
賦課方式は、社会的扶養の仕組みであることから、その時々の現役世代が負担する年金保険料を財源として、年金を給付しますが、少子高齢化が進行すると、年金保険料を負担する現役世代の人数が減り、年金を受け取る高齢者の人数が増加していきます。
このため、賦課方式のもとで年金の給付水準を維持しようとすると、現役世代の年金保険料負担が増えてしまうことになり、逆に、現役世代に保険料負担がかかりすぎないようにすると、年金の給付水準が下がってしまいます。
出典 厚生労働省 日本の公的年金は「賦課ふか方式」~どうして積み立てておけないの?より引用
現役世代の皆さんが今後の将来を考えた時、今まで以上に年金保険料負担が増えてしまうことが懸念されるほか、これに加えて、現役世代が公的年金の支給を受ける時も年金の給付水準が下がってしまうことは決して否めません。
できる限り楽観的に考えたいものですが、このような大まかな年金制度の仕組みを知ると、前項で解説したような「個人型確定拠出年金(iDeCo)」や「つみたてNISA」を活用した自助努力による老後生活資金の準備が大切であることを実感するのではないでしょうか。
5. まとめ
本記事では、公的年金の仕組みについて解説を進め、併せて、公的年金だけに頼らないような老後資金の対策方法について「個人型確定拠出年金(iDeCo)」と「つみたてNISA」について紹介させていただきました。
時代の変化と共に私たちは、将来のことを考えた柔軟な対応や変化が求められますが、少なくとも今から老後の生活資金を考えるのであれば、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」や「つみたてNISA」といった制度を活用した対策が必要な時代であることは確かです。
仮に、ご自身が将来の老後資金について準備をしないことによって、老後生活が厳しいものを余儀なくされるということは、ご自身のみならず、子や孫世代にまでも経済的負担をかけてしまうことを理解し、その上で計画な老後資金準備を現役世代から行っていくことが求められる時代になっていることを確実に押さえておく必要があると考えられます。
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