積立投資(投信積立)とは、毎月投資信託を購入して資産運用をする投資方法になりますが、誰にでもあてはまる共通事項として、積立投資(投信積立)を行うためには、投資信託を購入する証券会社で専用の口座開設手続きをしなければならないことがあります。
そして、実際に積立投資(投信積立)を始めた場合、実際に購入した投資信託を専用の口座を含め、どの口座内で資産運用をするのか?といったことが1つの分岐点になります。
分岐点となる積立投資(投信積立)をすることができる具体的な口座には、「特定口座」「一般口座」「NISA口座」の3種類があり、それぞれの口座の特徴をあらかじめ理解しておかなければ、実際に受け取るお金に大きな影響を及ぼすことになるため、口座の選び方には細心の注意を払わなければなりません。
このようなことを踏まえまして本記事では、これらの口座の内、特定口座と一般口座に焦点を絞って、これらの違いや口座の選び方について解説を進めていきます。
1. 特定口座制度について知るところからはじめましょう
私たちが単に「口座」と見聞きしますと、銀行などで開設している預金口座をイメージすると思いますが、多くの皆さまに誤解されがちな積立投資(投信積立)の口座開設について「特定口座制度」を知るところからはじめていきましょう。
特定口座制度とは、国(国税庁)が認めている特例制度のことを言い、私たち投資家が、正確かつ簡単に税金の申告ができるように、特定口座内で取引した内容についての計算を金融商品取引業者等が行う制度です。
具体的には、金融商品取引業者等から送られる「特定口座年間取引報告書」といった書類に基づいて適宜、確定申告などの必要な手続きを行うことで、私たち投資家が、自分で取引の計算をする手間や負担を省くことで正確な税金の申告をしてもらうといった目的があります。
参考 国税庁「No.1476 特定口座制度」より
特定口座制度を大まかに知っておくことで、次項から後述する特定口座と一般口座の違いなどについて理解が深まると思われます。
2. 積立投資で開設が必要な口座(特定口座・一般口座)について解説します
積立投資(投信積立)で資産運用を始めるにあたり、口座開設が必要なことは、冒頭で述べた通りですが、特定口座は、「源泉徴収がある特定口座」と「源泉徴収がない特定口座」の2つにさらに細分化されます。
これらの特徴や違いも含めて、以下、「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」の3つの口座について、それぞれ個別に解説を進めていきます。
なお、特定口座は、実際に口座を開設する際、証券会社に提出する口座開設申込書に「特定口座の開設をする・しない」といった選択から選ぶことになりますが、言うまでもなく「特定口座は開設する」ことを強くおすすめ致します。
特定口座(源泉徴収あり)の特徴
特定口座(源泉徴収あり)の特徴は、特定口座内で取引した内容についての計算を金融商品取引業者等が行うことはもちろん、積立投資(投信積立)などで実際に運用益を得た場合は、それに伴う税金の計算と源泉徴収を行ってくれるため、基本的に確定申告をする必要がありません。
とにかく面倒なことは避けたい方やちょっとしたお得感を得られなくともとにかく全部お任せしてしまいたいと考えている方には向きの口座と言えるでしょう。
特定口座(源泉徴収なし)の特徴
特定口座(源泉徴収なし)の特徴は、特定口座内で取引した内容についての計算を金融商品取引業者等が行いますが、確定申告は自分で行わなければなりません。
たとえば、職業が自営業者やフリーランスなどで、毎年確定申告をされている方であれば、特定口座(源泉徴収なし)を選んで確定申告をする方が、税金の専門的な様々なケースに遭遇した場合に柔軟な対応が可能となり、結果として節税に繋がることも多々考えられます。
特に、自営業者の方で税理士と顧問契約されている方や毎年の確定申告を税理士へ依頼している方であれば、現在の収支状況などを加味してもらった上で特定口座の選択について尋ねてみるのが望ましいでしょう。
一般口座の特徴
一般口座の特徴は、特定口座とは異なり、年間取引計算書が金融商品取引業者等によって作成されることはありませんので、自分で運用損益を計算しなければならず、手間や負担が大きい特徴があります。
また、1年間の運用益が20万円を超えた場合は、確定申告が必要となるため、確定申告をしなれていない会社員や公務員などの職業の方であれば、さらに手間や負担が大きくなることが考えられます。
一般口座を利用するメリットが見当たらないことから、特定口座を開設し利用する方が十分なメリットが得られると考えられます。
3. それぞれの口座の違いをまとめてみた
これまでの解説を下に、3つの口座の違いについて以下、表へまとめて補足を進めていきます。
項目 | 特定口座 | 一般口座 | ||
---|---|---|---|---|
源泉徴収あり | 源泉徴収なし | |||
確定申告 | 年間利益20万円以上 | 不要 | 必要 | 必要 |
年間利益20万円以下 | 不要 | 不要 | 不要 | |
年間取引報告書 | 証券会社が作成 | 証券会社が作成 | 自分で作成 | |
控除の | 配偶者特別控除 | 確定申告をしない場合は可能 | 不可になる可能性あり | 不可になる可能性あり |
適用 | 扶養控除 | 確定申告をしない場合は可能 | 不可になる可能性あり | 不可になる可能性あり |
年間利益が20万円以下の場合の納税 | 自動納税 | 不要 | 不要 |
以下、すでに解説した内容と重複しますが、はじめに、積立投資(投信積立)の口座を開設するにあたって、特定口座の開設は必ず行うようにしましょう。
その上で、特定口座と一般口座のどちらを選べば良いのかを考える必要がありますが、答えは明白で「特定口座を選ぶ」ことが必須です。
一般口座を利用するメリットは、特定口座に比べると見られないため、「特定口座(源泉徴収あり)」と「特定口座(源泉徴収なし)」のどちらの口座を選ぶのか、二者択一で考えることが望ましいでしょう。
たとえば、会社員や公務員などで確定申告に馴染みが無い方や専業主婦や扶養に入っている方で投資を行っている場合などは「特定口座(源泉徴収あり)」を選んだ方が、メリットを多く得られる場合もあると思われます。
一方で、株式投資のように、短期保有の売買で積極的に利益を得る投資を行っている方や自営業者などで毎年の確定申告を行っている方であれば、「特定口座(源泉徴収なし)」を選んだ方が、専門的な税金対策の方法を幅広く柔軟に選べると考えられるため、得策だと推測されます。
なお、本記事のメインである積立投資(投信積立)の場合は、どちらの口座が良いのかにつきましては、「5.積立投資(投信積立)をするならば、どちらの特定口座が良いのか?」で触れていきます。
4. 重要!あくまでも税金は「確定した利益」に対してかかることを知ろう
これまで、積立投資(投信積立)に必要な口座について解説を進めていき、今さらな内容なのかもしれませんが、あくまでも税金は「確定した利益」に対してかかることを知っておかなければなりません。
たとえば、積立投資(投信積立)で毎月1万円ずつ5年間資産運用を続けた投資信託の総投資元金は60万円となりますが、この時、保有している投資信託をすべて80万円で売却した場合、「確定した利益は20万円」となります。
この例の場合ですと、保有している投資信託の価値が80万円になったとしても、100万円になったとしても、いくら増加したとしても、1年目から4年目までの資産運用している期間で売却していない期間について税金がかかることはありません。
あくまでも、投資信託を売却し「確定した利益が生じた年」に税金がかかる仕組み(例の場合は5年目)であることを知っておきましょう。
5. 積立投資(投信積立)をするならば、どちらの特定口座が良いのか?
特定口座と一般口座では、特定口座を選んだ方が良い旨をすでに解説させていただきましたが、それでは、「特定口座(源泉徴収あり)」と「特定口座(源泉徴収なし)」のどちらの口座を選ぶのが良いのでしょうか?
結論から申し上げますと、ご自身の考え、職業、その他さまざまな事情を総合的に考慮して決定することが最も望ましいです。
たとえば、「積立投資(投信積立)をする」といった事情だけ考慮してどちらの特定口座を選ぶのが得策なのか考えた時、基本的には特定口座の源泉徴収あり・なしはどちらでも良いのが本音です。
この理由として、積立投資(投信積立)は、長期の資産形成を目的とした投資手法であり、株式投資などのように短期的に保有して売買するようなものではないためです。
すでに解説させていただきましたように、あくまでも税金は「確定した利益」に対してかかるものであるため、そもそも売買などで運用益そのものを得ることがなければ、どちらの口座であったとしても無関係です。
積立投資(投信積立)は、10年、20年、30年といった時間をかけて少しずつ資産運用し投資信託を保有し続けながら必要な時がきたら売却して利益を確定させる流れとなるのが一般的であるため、利益を確定させる頻度が低く、極度に口座の違いによる影響が生じにくいということも考えられます。
そのため、「積立投資(投信積立)をする」といった事情だけでは、どちらの口座でも良いと考えられ、職業やその他の事情を総合的に考慮して決定するべきものであるわけです。
6. 参考 特定口座(源泉徴収あり)で税金が戻ってくる場合とは
一般に、特定口座(源泉徴収あり)で源泉徴収された税金は還付されないといったことがあるとされるものの、以下、参考までに専門的な内容をSBI証券のよくある質問から一部引用して紹介します。
Q.特定口座(特定預り)で源泉徴収された税金の還付について教えてください。
A.譲渡の都度、年初(税制年度は受渡日を基準として、1月1日から12月31日までのもの)からの譲渡損益を計算し、利益が発生した場合は源泉徴収を行い、損失が発生した場合には徴収の超過分を証券口座に還付します
モデルケース1
確定利益の日 | 運用損益 | 源泉徴収税額 | 税金総額 |
---|---|---|---|
1月10日 | 100000 | 20315 | 20315 |
2月15日 | 50000 | 10157 | 30472 |
3月20日 | ▲50,000 | ▲10,157 | 20315 |
4月25日 | ▲100,000 | ▲20,315 | 0 |
5月30日 | ▲50,000 | 0 | 0 |
※:税率20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)
※:▲は還付(戻り)を表します
4/25以降で損失が発生しても源泉徴収している税金額が0円であり、還付する金額がありませんので、5/30の還付金額は0円となります。
モデルケース2
確定利益の日 | 運用損益 | 源泉徴収税額 | 税金総額 |
---|---|---|---|
1月10日 | ▲100,000 | 0 | 0 |
2月15日 | 100000 | 0 | 0 |
3月20日 | 100000 | 20315 | 20315 |
本来であれば2月15日の利益確定に対して源泉徴収されることになるのですが、1月10日の損失を差し引きする損益通算を行うことになるため、2月15日時点では運用損益がプラスマイナス0円であることが確認できます。
そして3月20日に、この年、初めてのプラスになるということで、これに対して源泉徴収される仕組みになっており、いわば、年初からの売買取引の流れが重要であることが分かります。
モデルケースの2の場合、以後12月31日まで売買取引などが無い場合、これで1年間の課税関係が終了となります。
7. 特定口座の源泉徴収あり、源泉徴収なしを変更することもできる
積立投資(投信積立)で資産運用を行っていくと、時として当初設定した特定口座の源泉徴収あり、源泉徴収なしを変更した方が得策である場合が生じるかもしれません。
このような時は、いつでも無料で変更の届出をすることが可能です。
ただし、即時に口座が変更されるわけではなく、一定の条件を満たしていなければならないことがあるため、口座変更を希望されている方は、あらかじめ口座を開設している証券会社等に尋ねてみるのが望ましいでしょう。
Q.特定口座の「源泉徴収あり/なし」の変更はできますか?
A.特定口座の「源泉徴収あり/なし」の変更は、その年に特定預りの株式、投資信託、公社債を譲渡(信用建玉の反対売買・現渡、信用配当金調整金の支払・受取、投資信託・公社債の償還などを含む)等が発生していない場合に、源泉徴収区分の変更が可能です。
すでに特定預りの株式、投資信託、公社債を譲渡(信用建玉の反対売買・現渡、信用配当金調整金の支払・受取、投資信託・公社債の償還などを含む)された場合、その年は、特定口座の源泉徴収区分をご変更いただけません。
参考:SBI証券「よくあるご質問 Q&A」より一部引用
8. まとめ ~積立投資で使う特定口座と一般口座の違いについて解説。どれを選ぶべきか?~
本記事では、積立投資(投信積立)で利用する口座の内、特定口座と一般口座に焦点をあてて解説を進めさせていただきました。
少なからず一般口座よりも特定口座の方が利便性に優れていることは、本記事を通じてご確認いただくことができたと思いますが、様々な事情を総合的に考えた上でどの口座を活用するのかじっくりと検討したいものです。
本記事では触れることができなかった「NISA口座」について知ることによって、さらに活用の幅が広がることから、NISAやつみたてNISAについても併せて確認しておくことを強くおすすめ致します。
参考 つみたてNISA(積立NISA)のポイントを徹底解説。つみたてNISAの始め方
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