iDeCo(個人型確定拠出年金)は、原則としてお金を受け取ることができる60歳まで、あらかじめ選択した預金、保険、投資信託などの金融商品で資産運用を行うことになりますが、この間、転職などによって職業が変わる場合も十分考えられます。
iDeCoに加入している場合、転職などによって職業が変わった時は、一定の手続きをしないことによって「非常に大きな損失を被ることがある」のですが、iDeCo加入者の内、多くの皆さまが、そのような損失を被っていることに気が付いていないといった現実も実は多くあるのが現状です。
そこで本記事では、iDeCoに加入している方が転職した場合に焦点をあて、iDeCoの重要な注意事項と移行手続きについてわかりやすく解説していきます。
1. 転職をした場合におけるiDeCoの重要な注意事項を知っておこう
現在、iDeCoに加入している方やこれからiDeCoの加入を検討している方は、転職をした場合におけるiDeCoの重要な注意事項をあらかじめ確実に押さえておかなければなりませんが、ここで言う「iDeCoの重要な注意事項」とは、「自動移管」のことを指します。
自動移管とは、これまでiDeCoで資産運用して積立された資産が一度すべて売却されて現金化され、さらに手数料(4,269円)が差し引かれて国民年金基金連合会といったところへ自動的に現金が移されてしまいます。
参考:iDeCoを途中解約するための条件について解説より引用
仮に、iDeCoの加入中に転職をした後、一定の手続きをしないことによって自動移管がなされた場合に生じる非常に大きな損失は、次項の通りです。
自動移管された場合の4つのデメリット
- 現金化されたままで金融商品になっていないため、資産運用が一切なされない(お金が増えない)
- 現金化され自動移管された場合、1ヶ月あたり51円の手数料が毎月発生することになるため、自動移管された現金が少しずつ長期に渡って目減りしていくことになる
- 企業型確定拠出年金やiDeCoへ自動移管された資産を移さない限り、60歳になってもお金を受け取ることができない
- 自動移管されている間は、確定拠出年金の加入期間にならないため、加入期間が足りないことによって60歳からお金を受け取れない懸念が生じる
iDeCoの通算加入者期間 | 受取開始可能年齢 |
---|---|
10年以上 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上8年未満 | 62歳 |
4年以上6年未満 | 63歳 |
2年以上4年未満 | 64歳 |
1ヶ月以上2年未満 | 65歳 |
参考:iDeCoを途中解約するための条件について解説より引用
自動移管がされることによって、大きなデメリットばかりが生じ、メリットが何一つないこともあることから、iDeCo公式サイトにおきましても、目立つように注意喚起をしています。
出典:iDeCo公式サイト 転職・退職をされた方へ 自動移管された方より引用
では、iDeCoへ加入している期間中に転職などによって自動移管されないようにするためには、具体的にどのようにしたら良いのでしょう?
自動移管されないようにするためにはどうしたらよいのか?
デメリットしか発生しない自動移管がされてしまう条件とは、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型確定拠出年金に加入している方が、転職などで他の職業に就いてから「6ヶ月以内に必要な手続きを行わない場合」となります。
必要な手続きにつきましては、本記事のメインでもあることから後述致しますが、自動移管されないようにするためには、転職などで他の職業に就いてから、6ヶ月以内に、それぞれが必要な手続きを行うことで足りることを意味します。
この手続き方法は、すべて共通しているわけではなく、以前の職業から現在の職業がどのように変わったのか?以前の確定拠出年金の加入状況から現在の確定拠出年金の加入状況がどのように変わったのか?などによって異なることになるため、注意が必要です。
すでに自動移管されている場合はどうしたらよいのか?
仮に、転職してから6ヶ月を超えてすでに自動移管されている場合は、ご自身がiDeCoの契約をしている運営管理機関(金融機関)のコールセンターへ電話をして「放置していた資産を自分の口座に持っていきたい」旨を伝えることで足ります。
その後、運営管理機関(金融機関)より、「移換依頼書」と呼ばれる書類が届くことになりますので、必要事項を記入して再度返信します。
こちらは余談となりますが、自動移管されたものを元に戻すためには、手数料として1080円が発生することになりますが、1ヶ月あたり51円の手数料が毎月発生することによって現金が少しずつ長期に渡って確実に目減りしてしまうよりは、引き続き資産運用されることによってお金が増えるチャンスがあるわけですから、安いものだと割り切って手続きを行う方が無難な選択だといえるでしょう。
2. iDeCo加入中に転職した後の必要手続き方法を解説
ここからは、本記事のメインにあたるiDeCo加入中に転職した後の必要手続き方法を解説していきます。
なお、解説にあたりiDeCo公式サイトで公開している「転退職に伴う年金資産移換等早見表」を下に解説を進めていきますが、ここでは、「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者の方が60歳未満で転職・離職した場合」を想定して6つのパターンの解説を進めます。

仮に「企業型確定拠出年金の加入者の方が60歳未満で転職・離職した場合」につきましては、取り扱いが異なりますので、「転退職に伴う年金資産移換等早見表」を下にするか、以前加入していた企業型確定拠出年金の関係先に問い合わせるなどの対応をするようにして下さい。

転職・離職した後、企業年金制度(DB・DC)を実施していない会社等へ就いた場合
iDeCoに加入している方が、転職・離職した後、企業年金制度(DB・DC)を実施していない会社等へ就いた場合は、以下、①および②のいずれかの方法を選ぶ必要があります。
(1)引き続きiDeCoの加入者として継続加入(新規加入含む)する
引き続きiDeCoの加入者として継続加入する場合、以下2点の登録情報の変更届が必要となりますので、選択した運営管理機関(金融機関)で手続きをして下さい。
- 国民年金の種別が変わる場合・・・「種別変更届」
- 第2号被保険者の中で変更の場合・・・「加入者登録事業所変更届」
- 転職先の事業主証明書
(2)iDeCoの資格喪失届を提出し、運用指図者になる
運用指図者とは、iDeCoの掛金を拠出しないで、これまで掛けてきた金融資産のみ引き続き資産運用することをいいます。
なお、参考までに国民年金の種別と職業の関係を以下へ簡単にまとめて紹介します。
国民年金の種別 | 職業等 |
---|---|
第1号被保険者 | 自営業者・フリーランス等 (第2号および第3号被保険者以外は第1号被保険者に該当することになります) |
第2号被保険者 | 会社員・公務員 |
第3号被保険者 | 専業主婦(主夫) |
転職・離職した後、企業年金制度(DB)を実施している会社等へ就いた場合
iDeCoに加入している方が、転職・離職した後、企業年金制度(DB)を実施している会社等へ就いた場合の取り扱いは、前述した「2-1」で解説した取り扱いと全く同じになることから、ここでは解説を割愛させていただきます。
なお、企業年金制度(DB)とは、確定給付企業年金および厚生年金基金のことをいいます。
転職・離職した後、企業年金制度(DC)を実施している会社等へ就いた場合
iDeCoに加入している方が、転職・離職した後、企業年金制度(DC)を実施している会社等へ就いた場合は、以下、①、②、③のいずれかの方法を選ぶ必要があります。
- 転職先企業が実施する企業型DCへ資産を移換する
- iDeCoの加入資格を喪失する手続きをとる
- 転職先企業に移換手続きを申し出る(企業型DC規約でiDeCoへの加入を認めている場合は、移換せずにiDeCoを継続することもできます)
再就職先で企業年金制度(DC=企業型確定拠出年金)を実施しているかをあらかじめ把握しておくことが大切になりますが、不明な場合は、再就職先へ尋ねてみることが確実です。
iDeCoを最大限に活用するためには、①もしくは③のいずれかを選択するべきでしょう。
転職・離職した後、公務員になった場合
iDeCoに加入している方が、転職・離職した後、公務員になった場合は、以下、①および②のいずれかの方法を選ぶ必要があります。
(1)引き続きiDeCoの加入者として継続加入(新規加入含む)する
引き続きiDeCoの加入者として継続加入する場合、以下2点の登録情報の変更届が必要となりますので、選択した運営管理機関(金融機関)で手続きをして下さい。
- 国民年金の種別が変わる場合・・・「種別変更届」
- 第2号被保険者の中で変更の場合・・・「加入者登録事業所変更届」
- 転職先の事業主証明書
(2)iDeCoの資格喪失届を提出し、運用指図者になる
転職・離職した後、公務員になった場合の手続きは、「2-1」で解説した取り扱いと全く同じになることが確認できます。
転職・離職した後、国民年金の第3号被保険者(専業主婦(夫)等)になった場合
iDeCoに加入している方が、転職・離職した後、国民年金の第3号被保険者(専業主婦(夫)等)になった場合は、以下、①および②のいずれかの方法を選ぶ必要があります。
(1)引き続きiDeCoの加入者として継続加入(新規加入含む)する
引き続きiDeCoの加入者として継続加入する場合、以下の登録情報の変更届が必要となりますので、選択した運営管理機関(金融機関)で手続きをして下さい。
- 国民年金の種別が変わる場合・・・「種別変更届」
(2)iDeCoの資格喪失届を提出し、運用指図者になる
運用指図者とは、iDeCoの掛金を拠出しないで、これまで掛けてきた金融資産のみ引き続き資産運用することをいいます。
専業主婦(主夫)になることによって、iDeCoに拠出した掛金についての所得控除といった恩恵効果が期待できないものの、将来における老後の資産形成といった目的を考慮しますと、配偶者との相談や家計の懐具合と相談しながら、①および②のどちらの方法を選ぶのが良いか確認しておくことが大切です。
転職・離職した後、国民年金の第1号被保険者(自営業者等)になった場合
iDeCoに加入している方が、転職・離職した後、国民年金の第1号被保険者(自営業者等)になった場合は、以下、①および②のいずれかの方法を選ぶ必要があります。
(1)引き続きiDeCoの加入者として継続加入(新規加入含む)する
引き続きiDeCoの加入者として継続加入する場合、以下の登録情報の変更届が必要となりますので、選択した運営管理機関(金融機関)で手続きをして下さい。
- 国民年金の種別が変わる場合・・・「種別変更届」
(2)iDeCoの資格喪失届を提出し、運用指図者になる
運用指図者とは、iDeCoの掛金を拠出しないで、これまで掛けてきた金融資産のみ引き続き資産運用することをいいます。
前述した国民年金の第3号被保険者(専業主婦(夫)等)になった場合と取り扱いは同じになりますが、第1号被保険者がiDeCoで拠出できる掛金は、年間で816,000円となっており、第2号被保険者や第3号被保険者に比べて多くの掛金を拠出できるメリットがあります。
仮に、転職や離職などをした後、起業するなどで第1号被保険者になった場合は、①の方法を選択し、年間で816,000円まで掛けられるiDeCoの枠をできる限り有効に活用したいものです。
3. iDeCoの掛金拠出方法が、平成30年1月1日より法改正されて変わりました
これまでiDeCoの掛金は、月単位で拠出することとされていましたが、平成30年1月1日からは、「年単位」に変わり、12月から翌年11月までの範囲において、複数月分をまとめて拠出することや、1年間分をまとめて拠出することが可能となりました。
法改正(平成30年1月1日)後のiDeCo拠出限度額
国民年金の種別 | 具体な職業 | 年間上限額 |
---|---|---|
第1号被保険者 | 自営業・フリーランスなど | 816,000円 |
第2号被保険者 | 企業型DCのない会社の会社員 | 276,000円 |
企業型DCに加入している会社員 | 240,000円 | |
DB加入者、公務員 | 144,000円 | |
第3号被保険者 | 専業主婦(夫) | 276,000円 |
※企業型DC→企業型確定拠出年金 DB→確定給付企業年金・厚生年金基金
法改正が施行されたことによって、iDeCoの掛金における月額上限が無くなったことを意味することになりますが、従来のような毎月積立でiDeCoの掛金を拠出しない場合は、他の手続きが必要になりますので、年単位での拠出を希望している方は、運営管理機関(金融機関)に問い合わせてみて下さい。
4. まとめ ~転職した場合のiDeCoの移行手続きについてわかりやすく解説~
本記事では、iDeCoに加入している方が転職した場合に焦点をあて、iDeCoの重要な注意事項(自動移管)と移行手続きについてわかりやすく解説させていただきました。
本記事の要点は、転職などで他の職業に就いた場合は、6ヶ月以内に、それぞれ必要な手続きを行うこととなります。
そして、転職などで他の職業に就いた場合は、「2.iDeCo加入中に転職した後の必要手続き方法を解説」で紹介した6つのパターンのいずれかに必ずあてはまることになりますので、どのパターンにあてはまるのかを確認し、それぞれの選択肢から適切な手続きをするようにして下さい。
iDeCoの加入者は、転職や離職をしてから6ヶ月を超えてほったらかしにすることによって自動移管がなされ、デメリットしか生じないことを再度確認していただき、併せて、今後のiDeCoにおける資産運用につきましても、この部分だけは絶対に忘れないようにしておきたいものです。
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