障害年金は、一定の障害を抱えている人に対して公的年金から支給されるお金のことをいい、大きく国民年金から支給される「障害基礎年金」と厚生年金保険から支給される「障害厚生年金」の2つに分けられます。
これらの障害年金が支給されるためには、国民年金法および厚生年金保険法と呼ばれるそれぞれの法律に定められている支給要件を満たしている必要があるのですが、仮に、これらの障害年金の支給を受けている方が、新たにiDeCoへ加入することを考慮した場合、いつ、障害を負ってしまったのかが、大きな1つのポイントになります。
また、障害年金の受給者が、iDeCoの加入中に障害を負ったのか、iDeCoに加入する前から障害を負っていたのかによっても取り扱いが異なるため、解説が一筋縄ではいかないのも確かです。
本記事では、このようなことを踏まえた上で、障害年金を受け取っている人でもiDeCoに加入することができるのかについて、現在、障害年金の支給を受けている方が、新規でiDeCoへ加入するものとして解説を進めていきます。
1. 障害年金を受け取っている方でもiDeCoは使えます
出典 iDeCo公式サイト iDeCoってなに? 加入資格と掛金についてより一部引用
一般に、障害年金の支給を受けている方は、重度の障害状態である場合がほとんどであることから、定職に就くのが難しく、無職である場合が多いのが現状だと思われます。
国民年金の種別判定をする上において、仮に、無職の場合は、国民年金の第1号被保険者に該当し、第1号被保険者で、国民年金の保険料を免除されている方や未納の方は、原則としてiDeCoへ加入することができないとされています。
少々専門的な話になるのですが、障害年金の支給を受けている方は、国民年金保険料の納付が免除されることになっており、これを「法定免除」と呼ぶことから、前述した国民年金の保険料を免除されている方に該当しますが、例外として、iDeCoへ加入することができることになっています。
2. 障害年金を受け取っている方に対するiDeCoの掛金に特別な取り扱いはない
障害年金の支給を受けている方が、iDeCoへ加入する場合において、掛金にかかる特別な取り扱いはなく、あくまでも以下の表の通りとなります。
種別 | 職業等 | 勤務先の状況 | 年間拠出限度額 |
---|---|---|---|
第1号被保険者 | 自営業フリーランス | - | 816,000円 |
第2号被保険者 | 会社員・公務員等 | 勤務先に企業年金がない会社員 | 276,000円 |
企業型確定拠出年金に加入している会社員 | 240,000円 | ||
企業型確定給付年金もしくは厚生年金基金と企業型確定拠出年金に加入している会社員 | 144,000円 | ||
企業型確定給付年金もしくは厚生年金基金のみに加入している会社員 | |||
公務員等 | |||
第3号被保険者 | 専業主婦(主夫) | - | 276,000円 |
あまり多くはないと予測されますが、たとえば、障害年金の支給を受けている方で会社員や公務員であれば第2号被保険者となり、扶養されている専業主婦(主夫)で障害年金の支給を受けている場合は、第3号被保険者に該当します。
いずれの場合におかれましても、障害年金の支給を受けていることによる掛金の違いはなく、あくまでも国民年金の種別や勤務先の状況によって、年間の掛金上限額が決定されることになります。
なお、iDeCoに拠出した1年間(1月1日から12月31日まで)の掛金は、全額所得控除の対象になることから、一般に、節税効果があるとされますが、障害年金の支給を受けている方は、支給された障害年金は全額非課税であることから、iDeCoの掛金に対する節税効果が受けられる方は、かなり限定されるものと推測されます。
3. iDeCoで受取り可能な「障害給付金」を知る
iDeCoは、将来の老後資金を準備するための制度にあたりますが、国民年金や厚生年金保険と同じように、iDeCo加入者やiDeCoの加入者であったものが、所定の障害を負った場合には、「障害給付金」が支給されることになっています。
出典 楽天証券 個人型確定拠出年金(iDeCo)の給付 その他の給付金・一時金より引用
ただし、上記iDeCoの障害給付金を受け取る上において、必ず押さえておかなければならないポイントがあることから、本項では、それらのポイントについて要点を解説していきます。
iDeCoの障害給付金は、請求しなければ支給が開始されない
iDeCoの障害給付金は、iDeCoの加入者またはiDeCoへ加入されていた方が、70歳になる前に政令で定める高度障害となった場合、加入年数に関係なく障害給付金の受給権者となり、障害給付金の支給を「請求する」ことができるとされています。
つまり、70歳になる前に政令で定める高度障害になっていることに加え、障害給付金の支給を「請求」しなければ、障害給付金の支給が開始されないため注意が必要です。
iDeCoにおける障害給付金の支給金額は、ご自身が積立した資産の範囲内
国民年金や厚生年金保険から支給される障害年金は、計算式が設けられており、国民年金から支給される障害基礎年金は「定額支給」、厚生年金保険から支給される障害厚生年金は、「支給を受ける本人のこれまでの厚生年金保険の加入歴やその他の事情によって決定」されます。
一方、iDeCoにおける障害給付金の支給金額とは、これまでiDeCoに加入し、資産運用をしながら積立してきた資産の範囲内で行われます。
たとえば、iDeCoに30歳から加入をはじめ、20年後の50歳時に政令で定める高度障害になったと仮定し、それまでの資産形成金額が400万円あったとします。
この時、障害給付金を請求して受取することができる金額は、400万円ということを意味し、このお金は、以下の3つの方法からご自身の希望に合わせて自由に受取することが可能です。
- 年金(分割)として受け取る方法
- 一時金(一括)として受け取る方法
- 年金と一時金の併用で受け取る方法
なお、障害給付金として受け取った400万円は、上記のいずれかの方法を選んだ場合であっても非課税となっており、税金がかかる心配はありません。
iDeCoの障害給付金の受給者になった場合、以後の掛金拠出はできない
iDeCoの障害給付金を受け取ることができる要件を満たし、障害給付金の請求をした結果、障害給付金の受給者になった場合は、以後、iDeCoへ引き続き掛金を拠出して資産運用を行うことはできません。
iDeCoの障害給付金は、60歳前でも受け取りが可能
iDeCoで資産形成したお金は、原則として60歳になるまで引き出すことはできませんが、iDeCoの障害給付金を受け取るための要件を満たし、障害給付金の請求をした結果、障害給付金の受給者になった場合は、年齢が60歳前であったとしても受け取りが可能です。
iDeCoの障害給付金を受け取ることができる状況とは、あくまでも、特殊な事情であることを意味し、iDeCoの障害給付金を請求しない場合は、原則的な支給方法に基づいて60歳以降に開始されることに注意が必要です。
障害給付金の支給を受けている途中で障害が軽くなったときの取り扱い
iDeCoの障害給付金の支給を受けている途中で、仮に、障害が軽くなったとしても、障害給付金の支給が停止される場合や減額される場合といった弊害は発生しません。
国民年金や厚生年金保険から支給される障害年金の場合は、障害年金の支給を受けている途中で障害が軽くなったことによる障害年金の支給停止や等級改定といったものがあるものの、iDeCoの障害給付金では、このようなことは無く、公的年金における障害年金と取り扱いが異なりますので、注意が必要です。
障害年金の受給者が、新規でiDeCoへ加入しても障害給付金は支給されない
すでに、国民年金や厚生年金保険から障害年金を受けている方が、新規でiDeCoに加入したとしても、iDeCoの障害給付金が支給されることはありません。
なぜ、そのようなことが起こるのか、以下、iDeCoの障害給付金が支給されるための要件を確認して、その理由を紐解いていきたいと思います。
加入者または加入されていた方が、70歳になる前に政令で定める高度障害となった場合、加入年数に関係なく障害給付金の受給権者となり、障害給付金の支給を請求することができます。
出典:楽天証券/個人型確定拠出年金(iDeCo)の給付ーその他の給付金・一時金より引用
ポイントは、「政令で定める高度障害となった場合」です。
ちなみに、iDeCoの障害給付金を受け取るために必要な「政令で定める高度障害」とは、具体的には以下の通りです。
- 障害基礎年金の受給者(1級および2級の者に限る)
- 身体障害者手帳(1級~3級までの者に限る)の交付を受けた者
- 療育手帳(重度の者に限る)の交付を受けた者
- 精神保健福祉手帳(1級および2級の者に限る)の交付を受けた者
iDeCoの障害給付金は、上記4つの状態のいずれかに該当することになった場合に、請求することによって受けられるお金になりますので、たとえば、障害年金の受給者が、新規でiDeCoへ加入するということは、上記の状態になったのではなく、「すでに、政令で定める高度障害になっている」と解されます。
つまり、iDeCoの障害給付金を受け取るために必要な要件を、iDeCoへ加入する前から満たしており、「加入者または加入されていた方」といった文言に該当せず、結果として、支給要件を満たしていないと考えることができるわけです。
障害厚生年金3級の場合は、今後、iDeCoの障害給付金を請求できる可能性もある
国民年金および厚生年金保険から支給される障害年金は、国民年金法で規定されている障害等級が1級および2級の障害基礎年金と厚生年金保険法で規定されている障害等級が1級、2級、3級の障害厚生年金のことを指しています。
この時、障害基礎年金の1級および2級は、障害厚生年金の1級および2級にも該当するのですが、障害厚生年金3級の場合は、iDeCoの障害給付金を受け取るための「政令で定める高度障害となった場合」になっているとは限りません。
そのため、障害厚生年金3級の場合は、今後、何かしらの障害を抱えてしまった場合や障害が重くなってしまったことによって、障害等級が変化した場合などは、iDeCoの障害給付金を請求できる可能性もある点に注意が必要でしょう。
4. 障害年金の受給者は、iDeCoをやるべきか?
障害年金の支給を受けている方であってもiDeCoへ加入することができるものの、これまで解説してきた内容を踏まえた上で、障害年金の受給者は、iDeCoをやるべきか?を考えた時、はたして、iDeCoへ加入する意味があるのか疑問に感じるのは確かです。
もちろん、老後の備えに多くのお金を準備しておいた方が良いのは確かなのですが、障害年金は、受給者本人が亡くなるまで支給され続ける終身年金であること、重度の障害状態であるため、障害等級が将来に渡って変化する可能性が低いこと、医療や介護にかかるお金が相当優遇されているため、ほとんどかからないことなどを総合的に加味すると尚更です。
一般に、iDeCoへ加入する目的とは、節税効果を受けながら老後資金を準備するのが本来の在り方なのですが、障害年金の支給を受けている方であれば、これらの目的から大きく外れることが考えられます。
むしろ、将来の成年後見にかかるための費用対策やその他の事情を加味した対策といった違った活用をするための側面でiDeCoに加入するといった考え方の方が合っているような気もします。
また、iDeCoは、加入者本人が自ら資産運用をする金融商品を選んで決定し、自己の責任において運用がなされるものでありますから、障害年金の支給を受けている方の自己判断能力も問われてくるでしょう。
これらの事情を総合的に考慮した時、障害年金の受給者は、iDeCoをやるべきなのか難しい選択を迫られることになると思われます。
5. まとめ
iDeCoは、障害年金の支給を受けている方であったとしても加入することは可能です。
ただし、本記事中で解説したiDeCoの障害給付金における仕組みや注意点をはじめ、iDeCoをやるべきなのかを総合的に考えた時、はたしてどうなのかといった疑問は残ります。
通常、iDeCoは、加入者本人の自己責任において資産運用されるものではあるものの、障害年金の支給を受けている方であれば、本人のみならず、家族やその他の方による考え方の影響も大きく左右されることもあらかじめ踏まえておかなければなりません。
仮に、受け取った障害年金を本人ではなく家族や第三者が管理している可能性が高いことも考慮しますと、尚更、障害年金の支給を受けている受給者がiDeCoへ加入すること自体について、いま一度、検討しておく必要があると思われます。
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