iDeCoは、老後の生活資金を税金の優遇を受けられながらご自身で準備するための国の制度のことをいい、原則として20歳から60歳までの方が、条件を満たすことで加入できるものとなります。
iDeCoは、満60歳になると制度の加入資格を失い、これまで加入してきた期間に応じて60歳から65歳までの間でお金を受け取り始めることになるのですが、仮に、iDeCoへ加入している方が、60歳に達する前に死亡してしまった場合、これまで加入して掛け続けてきたお金はどのような取り扱いになるのか?といった問題が生じます。
結論から申し上げますと、このような場合は、遺族が「死亡一時金」といったお金を相続することになるのですが、本記事では、iDeCoの死亡一時金からiDeCoの加入中に死亡した場合の相続方法まで幅広く解説を進めていきます。
1. iDeCoにおける「死亡一時金」とは
iDeCoにおける「死亡一時金」とは、iDeCoに加入している本人が死亡した場合に遺族に対して支払われるお金のことをいい、1回でまとめて支払われる特徴があります。
そのため、iDeCoに加入して毎月拠出してきたお金が掛け捨てになることはなく、将来のご自身のためや家族のための大切な財産としての役割が保持されることになります。
なお、iDeCoの死亡一時金は、その名前の通り、一時金として1回でまとめて支払われることになりますので、年金形式の分割で受け取ることはできない点も押さえておきたいポイントといえるでしょう。
2. iDeCoの死亡一時金は、どの程度の金額になるのか
iDeCoの死亡一時金は、定額ではなく、iDeCo加入者が死亡した時の「個人別管理資産相当額」が死亡一時金として支払われることになります。
個人別管理資産相当額とは、iDeCo加入者の年金積立金のことをいい、ざっくりまとめますと、iDeCo加入者が死亡した時にiDeCoで資産形成できたお金(貯まっていたお金)が死亡一時金の金額ということになります。
実際には、死亡時の個人別管理資産額から給付時手数料等の事務手数料が差し引かれて死亡一時金として支払われます。
3. iDeCoの「死亡一時金」は、みなし相続財産としての取り扱いがなされる
亡くなった故人の財産を遺族が引き継ぐことを「相続」といいますが、iDeCoに加入していた本人が亡くなったことによって遺族が受け取る死亡一時金は、相続財産としての取り扱いがなされます。
相続財産とは、その名前の通り、遺族が引き継ぐ故人の財産のことをいいます。
ちなみに、iDeCoの死亡一時金も相続財産にあたるものの、厳密には「みなし相続財産」としての取り扱いがなされ、ざっくり解説しますと、一般の相続財産に比べて税金の計算をする上で優遇される財産としての取り扱いとなります。
具体的な取り扱いは、以下の通りです。
iDeCoの死亡一時金非課税枠=500万円×法定相続人の数
たとえば、iDeCo加入者が死亡し、遺族としてiDeCo加入者の配偶者および2人の子がいたと仮定します。
この時、iDeCoの死亡一時金が1500万円だったとした場合の相続財産とみなし相続財産の取り扱いの違いは以下の通りとなります。
相続財産 1,500万円
みなし相続財産 ※0円
※iDeCoの死亡一時金非課税枠 500万円×3人(配偶者と2人の子)=1,500万円
※1,500万円(iDeCoの死亡一時金)-1,500万円(非課税金額)=0円
通常、iDeCoの死亡一時金は、みなし相続財産として取り扱われることが一般的ですが、iDeCoの死亡一時金を請求した時期によって税金の取り扱いが異なることになっているため注意が必要です。
iDeCoの死亡一時金と請求時期における税金の取り扱いについて
iDeCoの死亡一時金は、iDeCoの加入者が死亡してから死亡一時金を請求するまでの期間によって税金の取り扱いが異なっており、具体的には、以下の表の通りです。
期間 | 税金 |
---|---|
死亡から3年以内 | みなし相続財産として相続税が課税される ※500万円×法定相続人の数までは非課税。 |
死亡から3年超~5年以内 | 受取人の一時所得として課税される |
死亡から5年超 | 死亡した者の本来の相続財産として相続税が課税される |
次項からは、上記表の期間別にそれぞれ個別に税金の取り扱いについて解説を進めていきます。
死亡日から3年以内にiDeCoの死亡一時金を受け取った場合
iDeCoの加入者が死亡してから3年以内に死亡一時金を遺族が受け取った場合、受け取ったiDeCoの死亡一時金は、みなし相続財産として相続税の課税対象資産として取り扱われることになります。
- 死亡一時金が1,000万円で法定相続人が3人の場合
1,000万円-(500万円×3人)=-500万円
この場合、受け取ったiDeCoの死亡一時金は、相続税の課税対象となりません。
- 死亡一時金が1,000万円で法定相続人が1人の場合
1,000万円-(500万円×1人)=500万円
この場合、本来の相続財産に500万円を合わせた金額が、相続税の課税対象資産として取り扱われることになります。
なお、相続税を計算する上で「基礎控除額」といったものが設けられており、死亡一時金が1,000万円で法定相続人が1人の場合、本来の相続財産に500万円を合わせた金額が、3,600万円以下であれば、遺族に対して相続税は発生することはありません。
参考:相続税の基礎控除額 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
死亡日から3年以上~5年以内にiDeCoの死亡一時金を受け取った場合
iDeCoの加入者が死亡してから3年以上~5年以内にiDeCoの死亡一時金を遺族が受け取った場合、iDeCoの死亡一時金を受け取った方の「一時所得」として、所得税および住民税の課税対象として取り扱われることになります。
一時所得={総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額)}×2分の1
総収入金額は、iDeCoの死亡一時金を表しており、「収入を得るために支出した金額」とは
これまでの掛金、特別控除額は50万円です。
たとえば、死亡一時金が700万円で、収入を得るために支出した金額が500万円だったと仮定した時、一時所得の計算は、以下のようになります。
700万円-500万円-50万円=150万円
150万円×2分の1=75万円(一時所得の金額)
iDeCoの死亡一時金をiDeCo加入者が死亡してから3年以上~5年以内に受け取った場合、受け取った本人の所得と一時所得を合算した金額に対して所得税および住民税が課されることになるため、3年以内にiDeCoの死亡一時金を受け取った場合と比べて、多少なりとも税負担を強いられてしまう可能性が高くなると推測されます。
死亡から5年を超えてiDeCoの死亡一時金を受け取った場合
iDeCoの加入者が死亡してから5年を超えてしまいますと、iDeCoの死亡一時金の請求権が無くなってしまいます。
死亡一時金を受けることができる者によるその権利の裁定の請求が死亡した者の死亡の後五年間ないときは、死亡一時金を受けることができる遺族はないものとみなして、前項の規定を適用する。
出典:確定拠出年金法 第41条5項より引用
iDeCoの死亡一時金の請求権が無くなってしまいますと、みなし相続財産ではなく相続財産として取り扱われることになるため、「3-1-1」で解説をした非課税枠が使えなくなり、相続税の税負担が重くなってしまうことに繋がります。
これまでの解説をまとめますと、iDeCoの死亡一時金は、iDeCo加入者が死亡してから3年以内に遺族が死亡一時金として受け取ることで最も税負担を少なくさせられると考えられることから、仮に、iDeCoへ加入していることについて、家族に知らせていない場合は、iDeCoへ加入していることや万が一の際には、死亡一時金が受け取れることを伝えておくことが大切です。
4. 死亡一時金を相続できる順位は、受取人の指定の有無によって異なる
一般に、死亡した故人の財産を相続する場合は、民法によって相続順位が定められておりますが、iDeCoの死亡一時金の場合、死亡一時金の受取人を指定している場合と指定していない場合で取り扱いが異なるといった特徴があります。
iDeCoの死亡一時金について受取人を指定している場合
iDeCoの死亡一時金について受取人を指定している場合は、その指定している人に対して死亡一時金が支給されることになります。
たとえば、iDeCoの死亡一時金について受取人を「孫」にしていた場合、相続の優先順位の高い配偶者や子を超えて孫がiDeCoの死亡一時金を受け取ることになり、これは、iDeCo独特の特徴といえます。
iDeCoの死亡一時金について受取人を指定していない場合
iDeCoの死亡一時金について受取人を指定していない場合は、法令で決められた順位で受取人が決められることになります。
確定拠出年金法では、死亡一時金の受取順位について上記イメージ図(水色部分)のように定めており、民法で規定されている相続順位とは異なっていることに注意が必要です。
5. iDeCoの死亡一時金の請求手続きについて
iDeCoの死亡一時金は、iDeCoの加入者が亡くなったことによって自動的に入金されるわけではなく、遺族からの「裁定請求」といった申請によって、はじめて支給が行われるものになります。
実際のところ、iDeCoの死亡一時金の請求をする場合は、亡くなった加入者の状態によって、iDeCoの死亡一時金を請求する先が異なることに注意が必要です。
iDeCoの加入者およびiDeCoの運用指図者であった場合
iDeCo加入者が選択していたiDeCoの運営管理機関(金融機関)に、遺族が、「加入者等死亡届」を提出します。
なお、加入者等死亡届には、「死亡診断書」または「死亡を明らかにすることができる書類(写しでも可能)」を添付する必要があります。
また、運営管理機関(金融機関)への 加入者等死亡届の提出とは別に、亡くなった方の年金資産を管理している記録関連運営管理機関(レコードキーパー)に対して、「死亡一時金裁定請求書」を提出する必要もあります。
なお、死亡一時金の支払手続きは、記録関連運営管理機関が行うことになっているほか、
「死亡一時金裁定請求書」の様式や必要な添付書類等については、記録関連運営管理機関で定めていますので、手続方法は、記録関連運営管理機関に問い合わせてみて下さい。
iDeCoの自動移換者であった方
iDeCoの自動移換者とは、企業型確定拠出年金の資格喪失後、6ヵ月間、手続きをとらず、年金資産が特定運営管理機関に移換された方のことをいい、亡くなった方が、iDeCoの自動移換者であった場合、遺族が、運営管理機関(金融機関)に対して、「死亡一時金裁定請求書」を提出します。
なお、こちらの場合の死亡一時金の支払手続きは、特定運営管理機関が行うことになっているのですが、「死亡一時金裁定請求書」の入手方法や必要な添付書類等は、運営管理機関(金融機関)に問い合わせてみて下さい。
亡くなった方が、どちらのパターンに属していたとしても、まずは、iDeCo加入者が選択していた運営管理機関(金融機関)に対して問い合わせるところから、死亡一時金の支給を受けるための手続きが開始されることになりますので、ここの部分だけしっかりと押さえておくことができれば問題ないでしょう。
6. iDeCoの死亡一時金を請求するまでの流れ
本記事の最後に、iDeCoの死亡一時金を請求するまでの一連の流れについて紹介しておきます。
- 運営管理機関に連絡を入れて請求に必要な書類を郵送してもらう
- 運営管理機関に裁定請求書類を返信する
- 運営管理機関で裁定(審査)が行われる
- 結果が書面で通知される
- 運用商品が売却され、資産が振り込まれる
iDeCoの死亡一時金を受けるまでには、資料請求から1ヶ月から2ヶ月ほどの時間を要することになるため、すぐにお金を振り込んでもらえるわけではない点に注意が必要です。
7. まとめ
本記事では、iDeCoの死亡一時金からiDeCoの加入中に死亡した場合の相続方法まで幅広く解説を進めさせていただきました。
iDeCoで資産運用をしたお金は、老後資金として受け取る前に死亡したとしても、掛け捨てにはならず、遺族に対して財産といった形で残してあげられるのは大きな強みです。
通常、人が亡くなったことによって相続が開始されますと、本記事で解説したiDeCoの死亡一時金の裁定請求のほかにも、やらなければならない相続にかかる手続きがたくさんあることから、できる限り一度にまとめて関係のある手続きが取れる方が遺族にとって望ましいのは確かです。
そのため、あまり多くはないと思いますが、仮に、家族へ内緒でiDeCoへ加入している場合は、できる限りiDeCoへ加入していることを伝えておくことをおすすめする一方、どうしても伝えたくない場合は、せめて遺言書にiDeCoへ加入していることを残しておくなどの対策や工夫を取っておくことをおすすめ致します。
iDeCoで老後のお金の準備をするということは、制度を活用する最初から最後まで多くの恩恵が受けられることを意味していることから、できる限り、iDeCoを積極的に活用しておきたいものです。
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