自営業者で20歳から60歳までの方は、国民年金法といった法律上、第1号被保険者に該当することから、会社員や公務員などと異なり厚生年金保険に加入することは通常ありません。
そのため、原則として65歳から支給が開始される公的年金も少ないことが一般的で、仮に、20歳から60歳までの40年間において、すべて国民年金保険料を納めたとしても年額で779,300円(平成30年2月現在)しか支給が受けられません。
さらに、今後、この年金額が減る可能性が極めて高いとされていることから、現在、自営業者やフリーランスといった職業の方は、国民年金だけでは十分な老後の資産は足りないと言い切ることができます。
このような現状から、自営業者が老後の生活資金を自分自身で備えるための方法として「iDeCo(個人型確定拠出年金)」「国民年金基金」「小規模企業共済」など様々な制度を活用した自分年金作りをしていくことが、自営業をする多くの方に求められる時代となっています。
このようなことを踏まえまして本記事では、自営業者が活用できる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」「国民年金基金」「小規模企業共済」といった3つの制度の特徴を解説し、併せてどの制度を選ぶのが理想なのかといった考え方について紹介していきます。
1. 「iDeCo(個人型確定拠出年金)」「国民年金基金」「小規模企業共済」の特徴
「iDeCo(個人型確定拠出年金)」「国民年金基金」「小規模企業共済」といった3つの制度は、すべて自営業者が老後の生活資金を準備するための制度にあたりますが、それぞれの制度の特徴を比較できるように表にまとめております。
比較内容 | iDeCo | 国民年金基金 | 小規模企業共済 |
---|---|---|---|
制度の概要 | iDeCoとは、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金の1つのことをいい、国民年金や厚生年金と組み合わせることで、より豊かな老後生活を送るための一助となります。 | 国民年金基金とは、会社員等の方との年金額の差を解消するために創設された公的な年金制度のことをいいます。
国民年金基金制度は、国民年金法の規定に基づく公的な年金であり、国民年金(老齢基礎年金)とセットで、自営業者など国民年金の第1号被保険者の老後の所得保障の役割を担うものです。 |
小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度のことをいいます。 |
加入条件 | あり | あり | あり |
保障期間 | 有期 | 終身 | 有期 |
掛金 | 5,000円~68,000円 | 掛金の月額上限68,000円 (選択した給付の型、加入口数、加入時の年齢、性別によって掛金が決まる) |
1,000円~70,000円 |
掛金増減の単位 | 1,000円単位 | 自由 | 500円単位 |
掛金の変更 | ○(1,000円単位) | △ (1口目は×、2口目以降は○) |
○ (500円単位) |
所得控除の種類 | 小規模企業共済等掛金控除 | 社会保険料控除 | 小規模企業共済等掛金控除 |
掛金の所得控除 | 全額 | 全額 | 全額 |
手数料 | 必要 | 不要 | 不要 |
期間 | 60歳まで | 60歳未満で加入:60歳まで 60歳以上で加入:65歳まで |
事業継続中は満期なし |
予定利率 | 運用次第 | 1.5%(減る可能性あり) | 0.01 |
途中解約 | × | × | ○(500円単位) |
受給期間 | 原則60歳から | 原則65歳から | 任意のタイミング |
受給額 | 運用次第 | プラン次第 | 納付月数に応じて掛金の80~120% |
受給方法 | 一括、分割、併用 | 分割 | 一括、分割、併用 |
受給時の節税 | ○ | ○ | 〇 |
制度の概要を確認しますと、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」「国民年金基金」「小規模企業共済」といった3つの制度は、どの制度を活用したとしても老後の生活資金を準備するための制度であることが確認できます。
ただし、上記比較表では、それぞれの制度のメリットおよびデメリットについて確認することはできませんので、次項では、これらの制度のメリットおよびデメリットをまとめた表を紹介します。
それぞれの制度のメリット・デメリットをまとめてみた
制度名 | メリット | デメリット |
---|---|---|
iDeCo | ・運用益が非課税 ・掛金が全額所得控除に ・受給時にも節税効果がある ・運用次第で多くの資産が作れる |
・原則60歳までは解約できない ・運用次第で元本割れをする ・手数料がかかる |
国民年金基金 | ・終身年金である ・掛金が全額所得控除に |
・最初の掛金を変更できない ・途中解約ができない ・予定利率が下がる可能性がある ・分割でしか受け取れない |
小規模企業共済 | ・掛金の自由度が高い ・掛金が全額所得控除に ・好きなタイミングで受け取れる ・基本的に満期なし |
・予定利率が低い ・未納期間次第で元本割れする ・加入できる人が自営業者などに限られる |
「iDeCo(個人型確定拠出年金)」「国民年金基金」「小規模企業共済」の3つの制度は、すべて節税効果が認められており、どの制度を活用したとしても掛金に対する節税効果に違いはありません。
また、これらの制度を活用して準備したお金を受け取った時に適用される税制につきましても、一括で受け取るのか、分割で受け取るのかの違いはあるものの、適用される税制は共通しているため、こちらも大きな違いはありません。
では、自営業者が老後の資金を準備するために加入するには、「iDeCo」「小規模企業共済」「国民年金基金」のどれが良いのでしょう?
こちらは、「3.自営業者が加入するには、「iDeCo」「小規模企業共済」「国民年金基金」のどれが良い?」で後述させていただくことにしまして、まずは、自営業者で「iDeCo」「国民年金基金」「小規模企業共済」に加入できない場合を知るところから始めていきましょう。
2. 自営業者で「iDeCo」「国民年金基金」「小規模企業共済」に加入できない場合を知る
実のところ、すでに紹介した3つの制度の比較表において、「iDeCo」「国民年金基金」「小規模企業共済」には、すべて加入条件が設定されており、加入条件を満たしていない自営業者の方は、そもそも、制度を活用することはできません。
そのため、まずは、これらの制度に加入できない場合について知ることが重要です。
比較内容 | iDeCo | 国民年金基金 | 小規模企業共済 |
---|---|---|---|
自営業者で制度に加入できない場合 | ・60歳以上の方 ・海外に住んでいる方 ・国民年金保険料を支払っていない ・または免除を受けている方 |
・国民年金の保険料を免除(一部免除・学生納付特例・納付猶予を含む)されている方 ・農業者年金の被保険者の方 |
なし |
やはり目に付くポイントは、「国民年金保険料を支払っていない、または、免除を受けている」といったところではないでしょうか。
自営業者の場合、赤字経営や少ない収入や所得といった状況が理由で国民年金保険料の未納や免除の履歴があるといった方も多いと思いますが、これらの状況にある方は、iDeCoや国民年金基金に加入することはできません。
意外と盲点なのが、「学生納付特例」です。
学生納付特例とは、たとえば、大学や専門学校などの学生の時に、国民年金保険料の納付を免除される制度のことをいい、この「学生納付特例」を活用して、それ以降、そのまま国民年金保険料を納めていない場合は、この時の免除された履歴が残っているため、こちらもiDeCoや国民年金基金に加入することはできないことを意味します。
そのため、このような場合ですと3つの制度から選ぶとすれば、小規模企業共済しか選択肢がないことになります。
3. 自営業者が加入するには、「iDeCo」「小規模企業共済」「国民年金基金」のどれが良い?
これまで「iDeCo」「小規模企業共済」「国民年金基金」の特徴とメリットおよびデメリットについて解説を進めてきましたが、これらの制度の中で自営業者が加入するにはどれが良いのか?といった疑問を多くの皆さまがお持ちだと思います。
すべての制度に加入できる自営業者であるといった状況が整っている前提で結論から申し上げると、管理人は「iDeCo」への加入が最も良いと考えます。
「iDeCo」「小規模企業共済」「国民年金基金」は、どれも節税効果に差が生じることはありませんが、それでは、なぜiDeCoへの加入が最も良いのでしょう。
4. 自営業者にiDeCoがおすすめの最大の理由
iDeCoが最も良いと考える最大の理由は「自分の考えで将来の老後資金を準備できる」ところにあります。
つまり、ご自身が老後に必要としているお金について、ご自身の考えの下、掛金を決定し資産運用をご自身で行うことになりますので、不確定な予定利率に翻弄されることがなく、より確実に老後資金を準備できるところがiDeCoをおすすめする最大の理由です。
たとえば、現在35歳の自営業者がiDeCoを始めたものと仮定し、1ヶ月あたり30,000円を運用利率3%で60歳まで資産運用した場合の概算シミュレーション結果は以下の通りです。
参考:楽天証券 iDeCo節税シミュレーションより管理人試算
この場合、60歳で合計13,380,235円のお金を準備することができたといった見方になります。
ちなみに、同じ前提条件で月額68,000円ずつ資産運用した場合も紹介しておきます。
参考:楽天証券 iDeCo節税シミュレーションより管理人試算
この場合、60歳で合計30,328,532円のお金を準備できることが確認でき、iDeCoへ拠出する掛金や運用利率、iDeCoを始める年聯などによって準備できる金額が大きく変わることになります。
このように、ご自身が備えておきたい老後資金に合わせて資産運用方法を自由に組み合わせられるところが国民年金基金や小規模企業共済にはないiDeCoの最大の魅力なのです。
自営業者だからこそ、ご自身の引退年齢も考えながらiDeCoを活用したい
自営業者は、会社員や公務員などとは異なり、基本的に定年退職といったものはありません。
そのため、自営業者であるご自身が年齢を重ねていく上で何歳まで仕事を続けられそうか、何歳で引退するのかといったことも踏まえながらiDeCoで老後のお金を準備する計画を立てておきたいものです。
なぜならば、自営業者は高齢になったとしても「生きがい」として働いている場合も多く、少なくとも働いている間は、お金が入ってくることになるため、iDeCoで極端に多くのお金を準備する必要性があるかどうかについて若干の疑問が生じるからです。
したがいまして、単に自営業者といっても体力を使う仕事から、事務的な仕事まで様々でありますから、年齢と共に続けられる仕事であるかどうかを考えながらiDeCoを活用することを強くおすすめ致します。
5. 「小規模企業共済」+「つみたてNISA」を併用する老後資金対策も効果的
自営業者の方で、国民年金保険料の未納や免除履歴があることが原因で残念ながらiDeCoや国民年金基金に加入できない方は、「小規模企業共済」+「つみたてNISA」を併用する老後資金対策も効果的です。
小規模企業共済は、自営業者のための退職金制度でありますから、ご自身が引退された時のための備えとして活用することができるほか、国民年金と同じように65歳から少しずつ受け取ることも可能です。
一方、つみたてNISAは、平成30年1月より新たに創設された「少額投資非課税制度」のことをいい、金融庁が指定した投資信託やETF(上場投資信託)と呼ばれる金融商品をご自身で選んで資産運用する制度でiDeCoに制度が酷似しています。
つみたてNISAがiDeCoと異なるところは、1ヶ月に拠出した掛金が所得控除の対象にならないことや資産運用の期間が20年となっていることなどがあげられますが、こちらは小規模企業共済と併用していることで、つみたてNISAには無いメリットをカバーできることになります。
また、資産形成できる金額につきましては、つみたてNISAは、毎月33,000円以下で投資信託等を積立方式で購入しながら資産運用し、最大で20年間に渡って税金がかからない制度であることから、資産運用の期間についてはiDeCoに比べて劣ってしまう場合もあるものの、こちらも小規模企業共済と併用することでカバーすることが可能です。
つまり、iDeCoを活用することができない自営業者であったとしても「小規模企業共済」+「つみたてNISA」を併用することは、iDeCoを活用していることとさほど変わらない効果を生み出せることを意味しているわけです。
小規模企業共済は、1ヶ月あたり70,000円まで、つみたてNISAは、1ヶ月あたり約33,000円までといった決まりがあることから、それぞれの特徴を踏まえた上で拠出する金額の配分を考えながらそれぞれの制度を活用することがとても大切になります。
参考:つみたてNISAのメリット・デメリットを解説。つみたてNISAの特徴を押さえよう
6. まとめ
本記事では、自営業者が活用できる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」「国民年金基金」「小規模企業共済」といった3つの制度の特徴を解説し、併せてどの制度を選ぶのが理想なのかといった考え方について紹介させていただきました。
やはり、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、現時点で最強の老後資金対策制度と言われるだけあって、改めて3つの制度を比較すると優れていることを実感します。
ただし、デメリットとして60歳になるまでお金を引き出せないことや国民年金保険料の未納や免除がある自営業者であれば、iDeCoへ加入ができないといったものもありますので、本記事の最後に紹介したような「小規模企業共済」+「つみたてNISA」を併用するといった賢い工夫が、ご自身で老後生活資金を準備するために今後重要な課題となってくるでしょう。
自営業者は、会社員や公務員などと違って収入が安定しない職業でありますから、この辺も視野に入れた上で無理のない、最後まで継続していける金額の範囲で拠出することを心掛けるようにしたいものです。
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