通常、「投資」にはまとまったお金(頭金)をあらかじめ用意しておくことが望ましいのですが、投資信託を毎月少しずつ購入する「積立投資」におきましては、あらかじめ頭金を用意しておく必要がありません。
実際のところ、積立投資は「月々500円」から始められるところもあり、特にインターネット証券で口座を開設することで誰でも簡単に積立投資が始められるのが現状となっています。
本記事の解説を始めていく前に一点申し添えておかなければならないこととして、投資を始める際は、「投資目的」を明確にしておくことが重要になりますが、積立投資は「長期の資産運用向け」の投資方法になります。
したがいまして、積立投資は、1年、3年、5年といった短い期間で大きな運用益を上げることに不向きな投資方法であることをあらかじめ理解しておく必要があります。
この辺を踏まえまして、本記事では積立投資と頭金の関係性について分かりやすく解説をしていきます。
1. 積立投資は頭金がなくてもはじめることができます
冒頭でも触れましたように、積立投資は、多額の頭金を必要としない投資方法であり、ネット証券を利用すれば、最低500円から積立投資をはじめることができます。
つまり、積立投資を始めるためには「頭金が不要」と考えることができるわけです。
仮に、積立投資をするのに「多額の頭金が必要なのでは」と考えて、投資を始めることに躊躇している人は、まずは少額から積立投資を始めてみることをオススメします。
参考までに、以下、30歳の会社員が定年退職を迎える60歳までに無理のない範囲で老後の資金を準備したいといった想定で積立投資を始めた効果をシミュレーションしたものを紹介します。

参考 楽天証券シミュレーターより試算
30歳から60歳までの30年間、積立投資を継続し目標金額1000万円を準備する試算結果になります。退職金と積立投資で得た1000万円を老後生活に活かし年金生活に支障が出ないようにするといった将来目標を掲げたイメージです。
リターン(利回り)が3%から5%は、一般にバランスが取れた運用利回り(安定した利回り)と言われることから、大きなリスクを抱えることがない状態を保ちながら積立投資をすることが可能です。
この場合、1ヶ月の積立投資にかかる金額が「12,015円」で「30年間」、「利回り5%」で運用することで「1000万円を得られる」といった見方になりますが、1ヶ月の積立投資にかけられる金額は決して無理のない金額であると思います。
仮に積立投資をしっかりとしたプランで計画的かつ確実に運用したいのであれば、金融商品を売らない中立的な立場にいる独立系FPなどへ相談してみるのも一策でしょう。

参考 楽天証券シミュレーターより試算
積立投資のように長期の資産運用を目標にした投資の最大の特徴は、「複利効果」によって、お金が時間の経過とともに大きく増えていく特徴があります。
上記グラフを見ても明らかで、投資元本は「4,325,400円(12,015×12ヶ月×30年)」運用益は「5,674,600円(10,000,000-4,325,400)」であり、投資効果が大きいことが確認できます。
2. ・・・とはいえ、投資をはじめるときには多額の頭金を投資した方が良いのでは!?
積立投資は、頭金が無くとも始めることができるとはいえ、最初から多くの資金を投入した方が、資産形成がしやすいのではないか?と考える方もいるのではないでしょうか?
確かに、実際に資金(頭金)が多い方が、より多くの資産形成がしやすいのは事実ですが、それを頭金として投入した方が良いのかは別の話になります。
というのも、積立投資での資産形成で大事なのは「口数」と「基準価格(保有している投資信託の価値)」だからです。
最終的な資産は「口数×基準価格=資産」ということになるため、「どれだけ多くの口数を得られるか?」「最終的な基準価額がいくらなのか?」ということが、頭金で多くの投資信託を保有するか否かが変わってくることになります。
たとえば、100万円の頭金で投資信託を購入し、その後、月々3万円ずつ積立投資をした場合と100万円を5回に分けて投資信託を購入し、かつ毎月3万円ずつ積立投資をした場合で、以下のような基準価額の変動があった場合の効果の違いを解説していきます。
100万円の頭金で投資信託を購入し、その後、月々3万円ずつ積立投資をした場合
100万円の頭金を投資し、その後月々3万円ずつ投資した場合
月 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | TOTAL |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基準価額 | 10,000円 | 8,000円 | 7,000円 | 6,000円 | 5,000円 | 7,000円 | 8,000円 | |
投資額 | 1,000,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 1,180,000円 |
購入口数 | 100口 | 4口 | 4口 | 5口 | 6口 | 4口 | 4口 | 127口 |
仮に100万円の頭金で投資信託を購入し、その後、月々3万円ずつ積立投資をした場合の基準価額が上記表のような推移をした場合、7ヶ月目までに保有している投資信託の口数は「127口(端数切り上げ処理)」になります。
この時、7ヶ月目の基準価額8,000円に保有している127口を乗じることで、現在保有している投資信託の資産価値を把握することができます。
7ヶ月目までに保有している投資信託の資産価値は「127口×8,000円=1,016,000円」ということになり、投資額1,180,000円に比べて164,000円の損失となっていることが確認できます。
100万円を5回に分けて投資信託を購入し、かつ毎月3万円ずつ積立投資をした場合
100万円を5回に分けて、かつ毎月3万円ずつ投資した場合
月 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | TOTAL |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基準価額 | 10,000円 | 8,000円 | 7,000円 | 6,000円 | 5,000円 | 7,000円 | 8,000円 | |
投資額 | 200,000円 | 230,000円 | 230,000円 | 230,000円 | 230,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 1,180,000円 |
購入口数 | 20口 | 29口 | 33口 | 38口 | 46口 | 4口 | 4口 | 174口 |
仮に100万円を5回に分けて投資信託を購入し、かつ毎月3万円ずつ積立投資をした場合の基準価額が上記表のような推移をした場合、7ヶ月目までに保有している投資信託の口数は「174口(端数切り上げ処理)」になります。
この時点での最終的な資産は「174口×8,000円=1,392,000円」ということになり、仮に保有しているすべての投資信託を売却した場合、投資額1,180,000円から差し引いた212,000円の運用益(信託財産留保額などのコストを考慮しません)が得られることになります。
これら2つの結果から、必ずしも最初に多額の金額を投資したほうが多くの資産形成ができるというわけではないことが分かり、時として、分割して投資をした方が優れた運用結果を残すこともあります。
ただし、あくまでも保有している投資信託の基準価額の変動によって運用損益は上下変動するわけですから、積立投資のように長期の時間をかけて「運用益が生じるタイミングで売却する」ことがポイントになります。
つまり、今、保有している投資信託を売却したら損をするといった状態では、長い時間をかけてプラスになる時期をじっくりと待てば良いわけであり、極度の基準価額の下落が懸念される場合は、専門家へ早い段階で尋ねてみるのが効果的でしょう。
3. 積立投資で多額の頭金を投資する2つのデメリット
積立投資をはじめる際に、今ある頭金を最初に投資するか、分割して投資をするのかといった選択はとても悩ましいところではあります。
管理人としては、分割して投資をすることをオススメします。
その理由としては「投資をはじめるタイミングに悩む」「最初にまとめて投資すると一度に大損をしてしまう可能性がある」という2つの理由からです。
本項では、それぞれについて詳しく解説します。
投資をはじめるタイミングに悩む
一度に多額の頭金を投資すると考えた場合、やはり一番に考えるのは「本当にまとめて投資しても大丈夫だろうか?」という不安だと思います。仮に、このような不安がある場合は、そもそも一度に多額の頭金を投資することを一度考え直してみるべきでしょう。
投資をするお金は、失っても良いお金であることが大前提であるため、不安を抱いている中で投資をすること自体に大きな問題があります。
このように考えた時、頭金はいつでも投資に回せるいわば「余剰資金」であるため、まずは積立投資のように、毎月コツコツと一定金額で投資信託を購入し続ける方が安全かつ安定的な投資方法と言えるはずです。
まとまった余剰資金を一度に投資に回す選択肢もありますが、逆に、毎月の積立投資の金額を月10000円から15000円に増額するなどのちょっとした工夫を施すことで、余剰資金を少しずつ積立投資に回す方が賢明かつ安全策であると考えることもできるのではないでしょうか。
最初にまとめて投資すると一度に大損をしてしまう可能性がある
仮に最初に多額の頭金を投資して、そのファンドの基準価額が暴落してしまうと、一気に大損をしてしまう可能性があります。具体的にはファンドの基準価額が右肩下がりをしてしまう次のような場合です。
100万円の頭金を投資し、その後月々3万円ずつ投資した場合
月 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | TOTAL |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基準価額 | 10,000円 | 8,000円 | 7,000円 | 6,000円 | 5,000円 | 4,000円 | 3,000円 | |
投資額 | 1,000,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 1,180,000円 |
購入口数 | 100口 | 4口 | 4口 | 5口 | 6口 | 8口 | 10口 | 137口 |
この場合、「137口×3,000円=411,000円」ということになり、投資額から769,000円の損失になっていることが分かります。
一方で100万円を5回に分けて、かつ毎月3万円ずつ投資した場合
月 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | TOTAL |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基準価額 | 10,000円 | 8,000円 | 7,000円 | 6,000円 | 5,000円 | 4,000円 | 3,000円 | |
投資額 | 200,000円 | 230,000円 | 230,000円 | 230,000円 | 230,000円 | 30,000円 | 30,000円 | 1,180,000円 |
購入口数 | 20口 | 29口 | 33口 | 38口 | 46口 | 8口 | 10口 | 183口 |
この場合「183口×3,000円=549,000円」となり、投資額から631,000円の赤字になっていることが確認できます。
これらはあくまでも一例であり、ここまで急激に基準価額が暴落してしまうことは基本的に考えにくいのですが、重要なのは「自分のルールを決めておく」ことになります。
ここでいう「自分のルール」とは、「基準価額が〇円になったら手離す」といったルールになります。
たとえば、あらかじめ「基準価額が5000円まで落ち込んでしまったら、保有している投資信託をすべて売却する=損切り」といったルールを自分で決めていた場合、損をする金額は先の例よりも少なくて済むはずです。
基準価額が5000円になった時点で損切りすると決めていた場合
月 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | TOTAL |
---|---|---|---|---|---|---|
基準価額 | 10,000円 | 8,000円 | 7,000円 | 6,000円 | 5,000円 | |
投資額 | 200,000円 | 230,000円 | 230,000円 | 230,000円 | 890,000円 | |
購入口数 | 20口 | 29口 | 33口 | 38口 | 120口 |
現在価値(売却額) 5000円×120口=600,000円
損失額 600,000円-890,000円=290,000円
先の例のように基準価額が3000円になってから損切りした場合は、631,000円の損失となりましたが、このようにあらかじめ損切りのルールを決めておくことで損失を少なく抑えることができるわけです。
いわゆる「損切り(そんぎり)」のタイミングについては、自分自身であらかじめ決めておくことが重要であり、年齢や投資目標などを考慮しておかなければならないことも合わせて押さえておきたい重要なポイントになります。
4. まとめ ~積立投資には頭金は必要ありません!今すぐ積立投資をはじめましょう~
本記事では、積立投資と頭金の関係性について解説させていただきました。
そもそも、積立投資の「強み」は、まとまった頭金が必要なく、少額からはじめられるところにあることから、投資初心者でも手軽にできるといったところにあります。
このように考えた時に、そもそも今ある頭金を一気に投じるメリットが残念ながら大きく見いだせないと推測することもできます。この理由は、「確実な運用益が出せるわけではないため」です。
つまり、大きなお金を投じて確実に運用益が得られるのではないといった事実がそこにあるのであれば、徐々に頭金を積立投資に回していき、目標金額へ近づけるための投資計画を立てる方が合理的であり効率的なはずです。
当然、頭金を投入するときのベストなタイミングといったものは、プロの専門家でも判断が難しいわけでありますから、いつ投入するべきか曖昧な状態で大きな頭金を投じるのはリスクが大きいだけでなく、大きなリターンを得るのは難しいと推測できます。
一度に購入した投資信託の基準価額が「大きく右肩上がりになった」とすれば大きなリターンが得られますが、そもそも、そのような値動きが考えにくいだけでなく、積立投資の投資目的から外れていることも考えられます。
あくまでも積立投資は、「長期の時間を有効活用」し「複利効果を賢く活用」し「無理のない金額でコツコツ積み立てていく投資」であり「一度に大きなリターンを得られない投資」です。
このような積立投資の特徴を確実に理解した上で今ある頭金を有効に積立投資に活かしていただきたいものです。
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