2016年6月に「はじめての人のための3,000円投資生活」という本が発売されたことによって、3,000円からでも積立投資をはじめて資産形成できることを多くの人が知る1つのきっかけになりました。
本書で書かれているポイントを要約すると次の通りです。
- 月々3,000円だけではお金が増えないと思ったら大間違い
- ネット証券で口座開設をしよう(源泉徴収有りの特定口座でOK)
- バランス型の投資信託を選べばOK
などといったことが書かれており、投資初心者にとってみますと積立投資のことをわかりやすく伝えておりますが、本記事では、はたして3,000円からの積立投資で資産形成が本当に可能であるのかどうかについて改めて検証し紹介していきたいと思います。
1. 積立投資3,000円からでも十分資産形成をすることはできるのか検証してみた
早速、積立投資3,000円からでも十分資産形成をすることはできるのか検証していきます。
ここでは、毎月3,000円ずつ積立投資に年金がもらえる65歳まで資産運用したものとし、それぞれの開始年齢から始めた時、はたしてどれくらいの資産形成ができるのかをシミュレーションしていきます。
月々3,000円ずつ積立投資をした場合
開始年齢 | 投資額 | 利回り | ||
---|---|---|---|---|
1% | 3% | 5% | ||
20歳 | 1,620,000円 | 2,044,866円 | 3,421,119円 | 6,079,312円 |
25歳 | 1,440,000円 | 1,769,674円 | 2,778,179円 | 4,578,060円 |
30歳 | 1,260,000円 | 1,507,899円 | 2,224,691円 | 3,408,277円 |
35歳 | 1,080,000円 | 1,258,885円 | 1,748,211円 | 2,496,776円 |
40歳 | 900,000円 | 1,022,010円 | 1,338,023円 | 1,786,529円 |
45歳 | 720,000円 | 796,684円 | 984,906円 | 1,233,101円 |
50歳 | 540,000円 | 582,342円 | 680,918円 | 801,867円 |
55歳 | 360,000円 | 378,450円 | 419,224円 | 465,847円 |
たとえば、30歳から65歳まで35年間、3,000円ずつ積立投資を行ったとしますと、投資額の合計は126万円(3,000円×12ヶ月×35年)となり、仮に5%の利回りで運用したとしますと35年後の概算金額は3,408,277円となり、運用益は2,148,277円になるといったイメージとなります。
月々3,000円であれば、決して無理をすることなく積立投資を始められる金額であるほか、約214万円も概算で増えるのであれば、積立投資を始めてみる価値は十分あると考えられます。
月々3,000円ずつ積立預金をした場合
次に、運用方法を積立投資から積立預金に変えて同じようにシミュレーションしていきます。
開始年齢 | 貯金額 | 貯蓄結果 | 利息 |
---|---|---|---|
20歳 | 1,620,000円 | 1,623,644円 | 3,644円 |
25歳 | 1,440,000円 | 1,442,878円 | 2,878円 |
30歳 | 1,260,000円 | 1,262,202円 | 2,202円 |
35歳 | 1,080,000円 | 1,081,617円 | 1,617円 |
40歳 | 900,000円 | 901,122円 | 1,122円 |
45歳 | 720,000円 | 720,717円 | 717円 |
50歳 | 540,000円 | 540,403円 | 403円 |
55歳 | 360,000円 | 360,179円 | 179円 |
30歳から65歳まで積立預金をしたとしますと、35年後の最終金額は1,262,202円となり、運用益(受取利息)は2,202円であることが確認できます。
一般に、預金に対する受取利息には、平成29年9月現在で20.315%の税金が徴収されることになりますので、実際に受け取ることのできる金額は、目に見えている表面上の金額よりも少なくなります。
同じ3,000円であったとしても、1ヶ月あたりどのように資産運用するのかによって、最終的に資産形成される金額は大きく異なっていることがご理解できたと思います。
月々3,000円では老後に必要なお金は貯められないのが現実
これまで2つの資産運用で「老後資金を目的」としたシミュレーションをしてきましたが、残念ながら、いずれの場合も月々3,000円では十分な老後資金を貯められないことが確認できたと思います。
実際のところ、本の内容におきましても「半年ごとに1,000円アップ」し、30年続けることが大事と書かれており、月々3,000円では充分な資産形成ができないことを本書でも紹介されています。
おそらく、著者は、あくまでも3,000円から試しで積立投資をスタートして欲しいということを一番に伝えたかったのだろうと思う一方で、はたして半年ごとに1000円アップすることが現実的かつ効果的であるかどうかといったら少々疑問が残るところです。
半年ごとに1000円ずつアップすることができる家計状況であれば、積立投資の開始当初から投資できる許容範囲で積立運用する方が効率的かつ手間が省けると考えることもできそうです。
投資手法は、人それぞれであり自己責任であることを踏まえますと、様々な意見や手法を参考にして自分なりにベストな方法を見つけることにつきます。
一般に、積立投資をすれば、積立預金をするよりもはるかに多くの資産形成をすることができるとされています。
一方で、老後に豊かな生活をするために必要なお金は3,000万円と言われている今の時代を考えた時、仮に20歳から65歳までの45年間、3,000円ずつ積立投資をしたとしても、不足することが確認できます。
そのため、積立投資で豊かな老後の生活資金を用意するといった目的があるとするならば、その目的を達成するためには、月々いくらずつ積立投資にお金を回していかなければならないのか把握するところから始めていかなければなりません。
2. 参考 老後資金を資産形成するためにはいくら積立する必要があるのか?
ここでは、参考までに、豊かな老後生活資金を資産形成するためには、月々いくら積立する必要があるのか?といったことについて紹介していきます。
はじめに、利回り3%で3,000万円貯めるときの月々の概算投資額について一覧表で紹介します。
65歳まで利回り3%で3,000万円貯めるときの月々の概算積立投資金額
開始年齢 | 月々の投資額 |
---|---|
20歳 | 26,307円 |
25歳 | 32,395円 |
30歳 | 40,455円 |
35歳 | 51,481円 |
40歳 | 67,263円 |
45歳 | 91,379円 |
50歳 | 132,174円 |
55歳 | 214,682円 |
楽天証券 積立かんたんシミュレーションより管理人試算
たとえば、28歳から積立投資をはじめる場合、本書の内容を参考にしますと、最初は3,000円でも良いのですが、少しずつ積立投資に回す投資金額をアップしていき、30歳になるまでには40,000円もしくは35歳になるまでに51,000円まで投資額をアップさせる必要があることがわかります。
しかしながら、この方法は、家計状況を踏まえた時に「非現実的」な方法であり、おそらく多くの方が実践するのが極めて難しいと予測します。
そのため、「豊かな老後生活」に固執するのではなく、「お金に困らない普段の老後生活」をするために、将来の年金だけでは不十分だと思われるため、積立投資で無理せず資産形成しようと考える方が、現実味があるのではないでしょうか?
3. 積立投資は余剰資金で行うことが鉄則!
将来を考えた資産形成は、これからの時代を生き抜いていく中で、本当に大切になってくることは確かであり、自己責任および自助努力で資産運用した人としなかった人に差が付くことは言うまでもなく明らかです。
このように考えた時、先に解説した投資目標にあわせた投資金額を知るのと同時に、長期的に積立投資を続けられる金額であるか?ということをあらかじめ確認しておくことも大切になります。
仮に、積立投資に回すお金が厳しいのであれば、積立投資による資産運用を行わないことが鉄則であるのと同時に、積立投資を含む投資全般は、あくまでも余剰資金で行うべきものになります。
また、月々3,000円や5,000円といった余剰資金を捻出できないということであれば、そもそも家計の見直しや余剰資金がしっかりと生じるような家計対策を優先して行わなければなりません。
4. 積立投資は、積立預金のような利用の仕方ができることを知ろう
積立投資も積立預金も、毎月お金を積み立てることに変わりはなく、あくまでも「投資」で資産運用するのか、「預金」で資産運用するのかといった違いだけになります。
一般に、投資と聞くと「損をする」「よく分からない」といったマイナスのイメージが先行してしまい、投資で資産運用をするといった一歩を踏み出せない方が多い印象を受けます。
しかし、積立投資の場合は、毎月投資信託を購入する投資手法であり、積立預金のように毎月口座へ自動的に入金されるのと何ら違いはありません。
あくまでも、3,000円のお金が、「投資信託」に変化するか「預金」に変化するかの違いであり、どちらも現金に変えられる「換金性」に優れている特徴があります。
積立投資で購入した投資信託を現金に換えたい場合は、保有している投資信託を「売り」に出すことで、通常は「4日後」に売却した代金が入金される仕組みとなっています。
積立預金は、金融機関に対して解約の申し出をすることで直ちに現金へ換金することができますが、一般にまとまった大きなお金が必要になる時は、あらかじめそのことを事前に把握していることが多いと考えられ、投資信託の売却から4日目の入金が大きな影響を与えるとはあまり考えにくいと思われます。
このように考えた時、積立投資で運用した投資信託を売却して早い期間で換金できるということは、換金性に優れ、かつ、大きな資産形成もできるといった一石二鳥の効果があると考えることもできるでしょう。
このような魅力のある積立投資も1つ重要な注意点があり、それは、「換金をすることで損失を被ることがある」ということです。
たとえば、毎月3,000円ずつ積立投資を続けていくことで現在100口(投資信託の単位は口で表します)を保有していたとします。
仮に、保有している投資信託の現在の価値にあたる「基準価額」が1口あたり2,900円であった時に50口の換金手続きを行った場合、「5000円の損失」になってしまいます。
参考(信託報酬や信託財産留保額などの手数料は加味しません)
保有している投資信託の総額 3,000円×100口=300,000円
保有している投資信託50口の総額 3,000円×50口=150,000円
売却した際の入金金額 2,900円×50口=145,000円
売却損益 145,000円-150,000円=▲5,000円
同じような考え方でいきますと、保有している投資信託の現在の価値にあたる「基準価額」が1口あたり3,100円であった時に50口の換金手続きを行った場合、「5000円の利益」になることが分かります。
このように積立投資で購入した投資信託は、換金性に優れているものの、通常、売却損益が生じることになるため、投資信託の売却段階で基準価額が購入した金額よりも低くなっている場合に損失を被る可能性があることを知っておく必要があります。
5. 積立投資で購入した投資信託を換金する時は「タイミング」が決め手
積立投資で購入した投資信託を換金する時に売却損益が生じるということは、当然のことながら売却益(儲け)が生じるタイミングで保有している投資信託を売却することが求められます。
しかし、まとまったお金を用意するために投資信託を売却しなければならない状況下で、かつ、今、投資信託を売却することで確実に損失を被ってしまうといったことも時にはあるでしょう。
このような最悪の事態を回避する上でも「バランスの良い資産運用」を心掛けることが重要になります。
ここで言う、「バランスの良い資産運用」とは、積立投資と積立預金をどちらも行うといったイメージです。
要は、投資と預金の良いところを活かしながら資産運用を行うことで、どうしてもまとまったお金が必要な時は、預金を取り崩すことで投資にかかる損失を回避するわけです。
投資と預金は、いわば攻めと守りにあたりますから、いずれもバランスよく行うことは、安定した資産形成が少なからずできるきっかけになると考えることができるでしょう。
6. まとめ ~3,000円からの積立投資で資産形成ができるのかを検証してみた~
本記事では、「はじめての人のための3,000円投資生活」という本の内容を参考にしつつ3,000円から始められる積立投資と資産形成について考えてみました。
本のタイトルにありますように、投資初心者に対して3,000円から投資生活を始めることでしっかりとした資産形成をしていきましょうというコンセプトは、決して間違っていることではなく、むしろ正しい考え方であることは確かです。
ただし、月々3,000円や5000円といった少額のお金を積立投資に回したとしても、資産形成できるお金にはどうしても限界があるわけでありますから、時には、投資目的や投資目標の金額を満たせないことがあるのもあらかじめ知っておく必要があります。
積立投資を3,000円ずつ行うのであれば、豊かな老後の資産形成をするのは難しいですが、住宅購入の頭金の一部、子どもの教育資金の一部、その他の補填資金などのような使い道ができるため、積立投資を3,000円という少額からでも始めてみること自体にマイナスはないと思われます。
本記事のまとめとは関係がありませんが、「はじめての人のための3,000円投資生活」という書籍は、その内容の評価が大きく分かれていることが確認でき、主に投資初心者の方々には肯定的、投資をすでに行われている方々には否定的な意見が多い特徴が見られました。
そのため、ご自身が投資に対してどのような立場であるのかを確認しつつ、まずは、多くの方々の意見を参考に「はじめての人のための3,000円投資生活」を読むのか、読まないのかについて自己判断されてみることをおすすめ致します。
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